年商92億!本明社長にスニーカービジネスの原点と展望を聞く!

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1996年に原宿でスニーカーショップをオープンして以来、NIKEとのコラボ商品の開発・販売を手掛けるなど、他社には真似のできない圧倒的な商品力で急成長を遂げてきた株式会社テクストトレーディングカンパニー。

現在は「atmos」「CHAPTER」「Kinetics」など複数のスニーカーセレクトショップを展開し、年商は92億円にのぼる。そのうちEC化率は3割5分、つまり30億円をECで売り上げている計算だが、本明秀文社長は「うちのECが成功しているとは全く思っていない」と断言する。本明社長が考える“成功”の定義とは――?

テクストトレーディングカンパニー 基本情報

atmosロゴ

<店舗数>

約30店舗。「atmos」「CHAPTER」のほか、スポーツカジュアルの「Sports Lab by atmos」、女性向けの「F atmos」「ChumChum」、バスケットボールシューズをセレクトした「Kinetics」「TOKYO23」など、テーマごとにショップを展開。

<取り扱いブランド数>

約100ブランド。取り扱いアイテムはNIKEが全体の6割5分を占め、NIKEだけで年間約1,800種類のアイテムを販売する。その他、アディダス、コンバース、プーマ、リーボック、ニューバランスなどナショナルブランドのスニーカーを中心に取り扱う。

<従業員数>

社員65名、アルバイト230名。

商売に本気になった“母ちゃんの一言”

商売に本気になった“母ちゃんの一言”

――テクストトレーディングカンパニーの原点を教えてください。

僕はアメリカの大学を卒業して帰国後、高級繊維商社で働いていました。

でも、仕事が面白くなくて2年半で辞めて、それからは自分で輸入業をはじめることにしたんです。アメリカにいた頃にNIKEの靴や服を日本よりも安く買えることを知っていたので、向こうで安く買いつけて、日本で販売したら儲かると思ったんですよね。

その頃、僕は既に結婚していたので、自分で75万円、妻が75万円を出して、会社をはじめることにしました。それを見ていた母ちゃんが不憫に思ったのか、「あなた、本当にそれでご飯食べていけるの? 私の預金通帳に150万円あるから貸してあげる」と言ってくれて、合計300万円の資本金で輸入業をスタートしました。

最初は、僕と別の仕事もしていた妻、母ちゃん、それに僕の妹が協力してくれたので、3.5人ではじめて、初年度から7.5億円を売り上げました。

300万円の資本金で7億円を売り上げるためには、回転率を上げるか、1円で仕入れたものを1万円で売るかの2通りの方法しかありません。僕が選んだのは前者で、しょっちゅうアメリカに飛んでは、朝から晩まで商品ばかり見てまわっていました。

それは今も変わっていません。NYまでの往復でANAのマイルは約6千マイル貯まりますが、今も年間で8万〜10万マイルは貯まりますね。

――創業から約20年が経過しましたが、その後の売上の推移も教えてもらえますか?

2年目は14億、3年目は20億、その後は10年ぐらい20億円周辺をウロウロしていて、あるときを境に29億、37億、2014年には54億、今年の8月末の決算では92億円、次の決算では96億円ぐらいで、もう少しで100億円に届くと思います。

20億円周辺を突き抜けるきっかけになったのは、150万円を出資してくれた母ちゃんの一言でした。母ちゃんがC型肝炎を患ってしまい、ある日、急に呼ばれて、「あんたは人生を無駄にしてるんじゃないの? もう少し商売を真面目にやりなさいよ。私はもう長くないんだから、私の息子だったら良い夢を見せて」と言われたんです。

20億円の売上があれば、お金は手元に残るし、誰も僕に文句を言わない状況でしたが、そう言われてからは心を入れ替えて商売に取り組み、売上を急上昇させることができました。母ちゃんの一言は本当に大きかったですね。

なぜ「atmos」は圧倒的に売れるのか?

なぜ「atmos」は圧倒的に売れるのか?

――売上を順調に伸ばしている「atmos」ですが、その理由はどこにあるのでしょうか?

「商品力」です。

僕たちは「スニーカーマニア」「スニーカーヘッズ」と呼ばれる世界中のスニーカー好きにスニーカーを売らせたら、世界で3本の指に入る会社だと自負しています。

なぜなら、僕らのようにNIKEとコラボ商品の別注をコンスタントにできるところはSupremeやCOMME des GARCONSぐらいしかないからです。他のメーカーが「NIKEと別注をやりたい」と言ったところで、簡単にできるものではないんですよ。

別注のアイテムは他に売っているところがない「atmosだけの限定品」なので、スニーカーヘッズは何としても欲しがります。だから、コラボ商品をネットにアップすると、すぐにサーバーがダウンしてしまうほど、弊社には商品力がある。だから売れるんです。


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――NIKEとのコラボはどのような流れで実現したのでしょうか?

初めてNIKEとコラボ商品をつくったのは2000年のことです。

当時、NIKEと別注をやっていたのは「Foot Locker」などアメリカの大手アパレルチェーンのみで、当時のうちのような小さい会社が実現するのは非現実的なことでした。でも、どうしても「AIR FORCE 1」の別注をやりたかったので、NIKEで働いている友人に「この絵柄でサンプルをつくったから別注をやらせてほしい」と頼みこみました。

AIR FORCE 1

友人は僕の熱意に押されて、「しょうがない。やらせてやるよ」と言ってくれて6千足つくりました。でも、しばらくしたら電話がかかってきて、「上司がめちゃくちゃ怒ってるから来てくれ」と言われて(笑)。

3時間ぐらい説教されたんですが、NIKEの上層部は怒りながらも「atmosならば売れる」とわかっていたので、6千足のうち半分をatmosで売るということで話がまとまりました。

――その後はコンスタントにNIKEやColumbiaなど世界的メーカーと別注を続けていますが、現在年間でコラボ商品は何アイテムつくっていますか?

シーズンで6〜10アイテムはつくっています。

うちは大手メーカーだけでなく、色々な人や会社とコラボをしているので、小さい物を含めれば毎週のようにコラボ商品を出してますね。近所のブランドやInstagramのフォロワーが1万人以上いる仲間と限定200枚のTシャツをつくることもよくあります。

あとは、商品だけでなくイベントのコラボもしていて、近々でいうと、海の日にアシックスと新宿のお店でイベントをやりますし、8月10日にはEXILEのメンバーがお店に来てトークイベントをやる予定です。

――世界的メーカーやインフルエンサーとコラボをすることで、他のスニーカーショップと差別化をしているんですね。コラボをするかの判断は本明さんがされるんですか?

「知り合いか、知り合いじゃないか」「面白いか、面白くないか」――判断基準はこれだけです。僕たちも商売なので、面白くないものも売らなければなりませんが、面白くないものばかり売っていると、“面白くないお店”になってしまうんですよ。

ECサイトでもお金の匂いのするサイトってあるじゃないですか。手っ取り早く商品を売りたいという気持ちがにじみ出ていて、うちのサイトもその傾向が少しあるので改善しなければならないのですが、だんだんそういうサイトはモノが売れなくなってきています。

面白いことをやるというのは、これからの時代、大事なことですよ。

スニーカービジネス特有のEC立ち上げ時の苦労

スニーカービジネス特有のEC立ち上げ時の苦労

――ECの話が出ましたが、「atmos」では何年からECをはじめたのでしょうか? また、はじめた理由も教えてください。

2002年です。現在は「atmos」「CHAPTER」「Kinetics」の3つの屋号のECサイトを運営していますが、今後は「atmos」1本にフォーカスしていく予定です。

ECをスタートしたのは、何となく当時みんながやりはじめたからですね。ECは日進月歩で変わるので、理解するのは素人にはなかなか難しい世界です。最初は素人同然でしたが、少しずつWeb専門チームの人数を増やしてきて、今は30名ぐらいの体制でECを運営しています。

――スニーカービジネスならではの「EC立ち上げの苦労」はありましたか?

スニーカーの難しさは「メーカーによってサイズが違う」ところです。

同じ27センチでもラスト(靴の木型)自体がNIKEとアディダスなどメーカーごとに違うので、実店舗と違って試着のできないECでは最初が難しいんです。ただ、「自分の場合、NIKEは26.5」とわかってしまえば、アイテムが変わってもサイズが同じなので、買い続けるようになるというメリットがあります。

そのため、最初は「AIR FORCE 1であればハーフサイズダウンがオススメ」などと書いて、お客様に教え込むと言ったらおかしいですが、教育してましたね。だから、初期と比べて「サイズが合わない」という理由の返品率はかなり減ってきています。

――ECをはじめて約15年が経過しますが、これまでに力を入れて改善してきた点は?

EC運営の肝は「クレーム対応」にあると思います。

うちは実店舗と自社・Yahoo!・楽天など複数のECを運営しているので、リアルタイムでの在庫変化にズレが生じて、売り越し(売り切れているのに販売してしまう)をしてしまったこともありました。その点は、在庫管理・受注管理ができるソフト「CROSS MALL」を導入したことで解消できました。

クレームが増えると、楽天などは休店措置を取られることがあるので、ECを運営するうえではクレームをいかに防ぐか、対応するかは重要なポイントです。

atmosのECは「成功していない」

atmosのECは「成功していない」

――EC売上が3割5分と、他社と比べても高いEC化率だと思いますが、本明さんが「ECが波にのってきた」と思われたタイミングはいつ頃ですか?

僕はうちのECが成功しているとは全く思ってません。

現在の「ECの世界標準」をアマゾンとすると、僕らは地の果てのゴミみたいなものですよ。「成功」というのは最先端でやっていることだと思っているので、うちがその定義には当てはまらないと思います。

atmosは他社にはできない差別化した商品を売っているので、もっとECで売ることができるはずです。

そうですね、月にプラス5千万円くらいはいけるんじゃないですか。

でも……、仕事をすればするだけ遊んだりする時間がなくなるじゃないですか。そこが悩みどころです。

――ECでプラス5千万円の売上を伸ばすために必要なことは?

1つは「スピード」です。もっと早く商品ページの更新ができれば、販売の機会ロスは減っていくと思います。

あとは「変化」に対応することも大切です。アメリカのアマゾンは2020年に国内アパレルの売上の19%を占めると言われていますが、こうなるとZARAのライバルはH&Mではなく、アマゾンになるということが現実として起こるでしょう。

つまり、今我々が置かれている状況は「ある日突然出てきたものが世の中を引っくり返す」という恐ろしい世の中なんです。そこを理解して、自分達もスピードをあげて第一線でやっていかないと脱落してしまうと思います。

もっと小さな話でも、僕はInstagramをやっているのですが、既に写真が飽きられて動画に興味が移っていると肌で感じてます。また、うちの大学生スタッフの大半はパソコンを持ってなくて、スマホ1台で買い物をしています。このような変化に合わせて、コンテンツも変えていく必要があるでしょうね。

――他にECの今後の改善点はありますか?

お金の匂いのするサイトから人が離れていっているので、「物語性」を出していくことですね。今は無数にサイトがあるので、「見る理由」がなければ見られるはずがないんですよ。

たとえば、原宿にはカレー屋が多いので、atmos原宿店のサイトを見たら、スタッフがランチで行ったカレー屋の写真と情報が毎日更新されているなど、「この店に行ったら、付随してこういう面白さがある」というライフスタイルまで落とし込んで提案していくことが大切だと思います。

札幌店はうまいラーメン屋、博多店であれば水炊きのお店など、やれることはたくさんあるので、「食べログを見るよりもatmosのサイトを見たほうがおいしい店がわかる」となったら面白いですね。

ECは「商品力が命」

atmosのECは「成功していない」

――最後に、これからECをはじめる方にアドバイスをお願いします。

うちもまだ成功していませんが、EC運営では、(1)スピード、(2)商品力、(3)情熱のある人の3つがポイントになります。

ただ、スピードでいうと、これからECをはじめるのはちょっと遅くて、既に「淘汰の時代」に入っているので、他にはない商品をいかに探すかが勝負になると思います。

蟻が砂糖に群がるように、今の時代、蟻にとっての砂糖になるような商品は何かを考えることが不可欠です。他社と同じ商品を売っているだけでは「値引き競争」に巻き込まれてしまうので、ECは「商品力が命」と言ってよいでしょうね。


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本明秀文(ほんみょう ひでふみ)

1969年生まれ。アメリカの大学を卒業後、2年半の繊維商社勤務を経て、1996年にスニーカーショップ「CHAPTER」を原宿にオープン。1997年、テクストトレーディングカンパニーを設立。その後はNIKEとコラボしてスニーカーを開発・販売するなど、他社には真似できない戦略で成長を続け、現在は「atmos」「Kinetics」など約30店舗を運営。

●取材・文:廣田喜昭

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