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注文を完了させないECサイト。自社の強みである「企画力」「提案力」を最大限に生かすための設計、戦略とは?

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1955年に福井県で活版印刷からスタートした小川印刷。創業から62年が経過した現在は、DM、ハガキ、ノベルティ、チラシ、フライヤー、ポスターから商品券まで、幅広い分野を扱う「年商25億円以上、社員約150名」の企業へと成長した。

2015年には自社初となるECサイト、DM作成に特化した「DMクリエイト.jp」をつくり、翌年には販売促進ツールを作成するための「販促クリエイト.jp」もオープン。

これら2つのECサイトに共通している大きな特徴は、「注文完了にこだわらない」という点だ。なぜ、簡単に注文できることがメリットのECサイトで、そのような戦略を選んだのか? 専務取締役 小川克巳さんに設計の真相を聞く。

小川印刷 基本情報

小川印刷 基本情報

<所在地>

福井本社

〒910-0836

福井県福井市大和田1丁目213番地

<設立年月日>

昭和30年1月(1955年1月)

<資本金>

4,000万円

<従業員数>

正社員:115名/パート35名 合計150名(平成27年9月現在)

<年 商>

25億72百万円(平成27年度)

印刷は「お客様と作り上げるオーダーメイド商品」

印刷は「お客様と作り上げるオーダーメイド商品」

――小川印刷様の事業について教えてください。

弊社は、DM、ハガキ、ノベルティ、チラシ、フライヤー、ポスターから商品券まで、印刷物全般の企画・制作・印刷・製本を行っている会社です。

1955年の創業から62年間にわたって印刷業を続けてきた私たちは、「印刷はお客様と作り上げるオーダーメイド商品」と考えています。

打ち合わせの段階からお客様の目的を達成するための提案を行い、受注した仕事は自社の職人(印刷のプロフェッショナル)が制作から印刷、仕上げまで責任を持って担当しているところが特長です。

――特に力を入れている商品は何でしょうか?

折り込みチラシやDM、店内POPなど、「集客」「店内プロモーション」「リピーター獲得」を目的とした販売促進物の印刷に力を入れています。

印刷全般の案件を受注していますが、全案件のうち、折り込みチラシが3割、DMが2割ほどなので、折り込みチラシとDMで半数を占めている状況です。

お客様からも「安心」と言われるワンストップ体制

お客様からも「安心」と言われるワンストップ体制

小川印刷様の“強み”について詳しく教えてください。

弊社の強みは、1.企画力・提案力、2.お客様目線のワンストップ体制の2点です。

弊社は印刷業界の中でもいち早く自社でデザイン部門を立ち上げ(1985年にデザインルームを設立)、小売り流通業の広告担当者と直接取引を行い、販促物をつくり続けてきました。打ち合わせを繰り返す中で身に付けた、お客様の要望を具現化する企画力、提案力には弊社に一日の長があると自負しております。

最近はネットプリントサービスが増えており、注文を受けたものをそのまま印刷する印刷会社が増えていますが、弊社は今も必ずお客様と営業担当が直接対面する打ち合わせの場を設け、企画、提案を行っています。

仕事を受注した後の制作にもこだわっています。営業と印刷が分かれている印刷会社もありますが、弊社は印刷完了までワンストップで、自社で行う体制を備えています。社内でスタッフが密に連携を取りながら仕事を進めるので、お客様からも「安心できる」という声をよくいただきます。

コンセプトは「自社の強みを最大化すること」

――ネットプリントサービスの話が出ましたが、小川印刷様もECサイト「DMクリエイト.jp」と「販促クリエイト.jp」を運営されていますね。ECサイト導入の理由は?

「お客様の発注プロセスの変化に対応するため」です。

以前の弊社の営業は、足繁くお客様のところに通って、「何かあったらお願いします」と頭を下げる、昔からながらの営業スタイルでした。

でも、今は昔と違ってネットがあるので、お客様は自分から必要な情報を得ることができます。そのため、「何かあったらお願いします」という営業スタイルでは、いずれは仕事が来なくなるのではないかと危機感を抱くようになったんです。

実際に、お客様は印刷会社から売り込みを受けて検討・作成をするのではなく、自分のペースで情報を収集し、発注先を選定することが多くなっていました。訪問営業ではそのニーズやスピードに応えられていないことは明らかでした。

そう考えた私は、改めて自分が担当していたDMの受注の流れを振り返ってみました。すると、DMを注文するときは、封筒の用紙、部数、色を選んで、封入物を決めるなど、ある程度のルールやパターンがあるという考えに至り、これを「システム化することで付加価値を提供できる」と考えました。

Web上で注文の流れをシステム化できれば、自分のペースで発注先を選定するお客様のニーズにマッチすることができます。また、以前はお客様からメールやFAXで要望をいただいて、見積もりを出して返答するというスタイルを取っていたので、お客様にも手間と時間がかかっていました。システム化すれば手間と時間の短縮に繋がるので、お客様のメリットにも直結すると考えました。

そこで2015年に、DMに特化したECサイト「DMクリエイト.jp」をつくりました。

――「DMクリエイト.jp」設計の際のコンセプトを教えてください。

「DMクリエイト.jp」と、翌年にオープンした販売促進物作成のための「販促クリエイト.jp」、どちらにも共通しているコンセプトは、「自社の強みやノウハウのシステム化」「お客様との接点づくり」です。

DMクリエイト

自社の強みを最大化することが一番で、「受注」は二の次でした。実際に、当初からシステム構築の担当者の方にも、「受注機能はつけなくていいです」と言っていたほどです。

巷には安さと簡単注文を売りにして、受注することを一番の目的にしているネットプリントのサイトが多々ありますが、それでは自社の強みを打ち出すことはできないし、同じサイトを作っても埋没してしまうと考えていました。

そこで私が考えたECサイトはお客様との打ち合わせを再現するようなサイト、自社の強みである「企画力」「提案力」を最大限生かす設計のサイトでした。具体的には、サイト上では注文まで完結せず、あえて見積もりの段階でいったん終了にします。

その後は通常の営業通り、営業スタッフが訪問して、弊社の強みである企画、提案を行うという流れにしています。だから、あくまでもECサイトは、お客様との「接点づくり」のためのツールというコンセプトで考えていきました。

――「注文完了にこだわらない」というECサイトは珍しいですね。

注文完了よりも自社の強みを打ち出すことのほうが大切だと考えました。

入口から見積もりの出口まで、弊社の強みである“ノウハウ”が詰め込まれています。「DMクリエイト.jp」では封筒の用紙、色、部数をスムーズに選んで進める流れや「新規オープンDM」「展示会招待DM」のパッケージなど、私たちがこれまで続けてきた営業のフローをパターン化し、お客様が感覚的かつ簡単に注文をできる設計になっています。

「販促クリエイト.jp」も同様です。たとえば「業種から選ぶ」をクリックして「美容室」を選択すると、私たちが長年培ってきたノウハウやデータを元にして、美容室が集客のために必要なチラシや看板、ポスターなどを提案しているので、お客様は利用シーンに必要なもの、適しているものをピックアップされた画面で選び、見積もりを確認することができます。

つまり、弊社のECサイトは「提案営業のWeb版」という位置づけなんです。

部活のように集まり、本音ベースで開発を進めた

――コンセプトが決まった後、ECサイト構築を進めるために、まずは何をしましたか?

知人にEC構築の会社を3社ほど紹介してもらい、相談をもちかけたのですが、「難しい」と言われたり、なぜかSEO対策や集客の話になってしまったりして、ビジョンを共有することがなかなかできませんでした。構想から1年ほどは開発パートナーが見つからない状況が続きました。

その後、「名刺・封筒の山櫻」のサイトがすてきだったので、どこで作ったか聞いたところ「ecbeing」と教えてもらいました。それですぐに連絡を入れました。

――ecbeingに相談してみていかがでしたか?

営業の方に「できます」と即答いただきました。

それまでは50枚ぐらいの企画書を持ち込んでは「実現は難しい」と言われていたので、他社とは反応が全く違いました。それだけでも、お願いしたいと思いました。

他にも理由はあります。ECサイトは個人情報を取り扱うので、サーバーの安定稼働やセキュリティ面は重視する点です。その点、ecbeingさんはナショナルブランドの顧客を多数抱えているので安心できると思いました。

また、コンテンツの更新が簡単な点、「できないことはないのではないか?」と思うほどのパッケージ機能があるところも大きな魅力でした。

――サイトが完成するまでに苦労された点などはありましたか?

見積もりや画像手配など商品の準備は時間と労力がいる作業でしたが、毎週ecbeingさんの担当の方達と“部活”みたいに集まって、話をしながら進めたので、楽しかった印象しかありません。

毎週のように膝を突き合わせて、コミュニケーションを繰り返していると、私が本当にやりたかったことがより明確になったり、お互いに本音で話せるようになったりと、関係性も少しずつ変化していきました。そのおかげで良いサイトができたと思います。

IT企業は華やかな印象がありましたが、この開発は私含め男性6名のチームで、ラグビー部のミーティングのようでちょっとイメージと違いましたけど(笑)。

ノウハウの詰まった「社内資料」としても活用

ノウハウの詰まった「社内資料」としても活用

――「DMクリエイト.jp」と「販促クリエイト.jp」をオープンして、仕事にはどのような“変化”がありましたか?

ECサイト構築のコンセプトだった「お客様との接点」は確実に増えました。

以前はこちらからお客様のところへ営業に行って受注するのみでしたが、サイトから打ち合わせに至るケースや「サイトを見た」と問い合わせの電話をいただくケースも増えてきました。先日はなんと海外の行政機関からも連絡が来ました。

他にも、サイトをつくったことで販促EXPOなどのイベントに出る機会を得ることができました。今年で3年目の出展になる販促EXPOでは、その場で1,000社近くの営業の方と名刺交換をすることができましたし、来場者の方からは「小川印刷のブースが一番盛り上がっていた」と言っていただけたほど、多くの方に弊社の商品を見ていただくことができました。

ECサイトが窓口になって、お客様との接点をたくさんつくってくれていると感じます。

――社内でも変化や反応はありましたか?

弊社の営業スタッフは「ノウハウが詰まった資料」としてECサイトを利用しています。

弊社は扱う商品が幅広いので、営業スタッフにはどうしても得意な分野とそうでない分野ができてしまうんです。自分の日々の業務ではあまり手掛けない商品、たとえばノベルティの商談をする時は、事前に「販促クリエイト.jp」をチェックすれば、最適なソリューションと、その価格をチェックすることができるようになっています。

ECサイトをつくる前は社内でもいまひとつ有用性が共有できない部分がありましたが、今ではその効果を実感し、社内のノウハウ共有ツールとしても有効活用してもらっています。

古くからある会社の資産をITの力で生まれ変わらせる

――現時点でECサイトに課題はありますか?

商品数は現時点で「DMクリエイト.jp」が5〜6千、「販促クリエイト.jp」が約千ありますが、今後はもっと商品点数を充実させたいです。ただ、情報を詰め過ぎるとお客様にシンプルに伝わらないので、如何にお客様の欲しい情報をピックアップして表示するが1つの課題です。

もう1つはスマホに対応することです。弊社は「モバイルフレンドリーじゃない」と言われてしまうことがあるので、スマホページをつくるべきだと思っています。ecbeingさんはドラえもんのポケットのように、お願いすれば何でもできると思っているので、今後スマホページについては担当の方と詰めていきたいと思います。

これらの課題をふまえたうえで、今後も弊社は「時代に即した印刷サービスを提供できる会社」を目指していきます。

――ありがとうございました。最後に、EC事業を成功させるための「秘訣」を教えてください。

当社のようなもの作りの会社がECを作る場合、長年培ってきた「自社の強み」を出せるかが成功するのポイントだと考えます。「DMクリエイト.jp」と「販促クリエイト.jp」には、弊社が62年かけて蓄積した強みとノウハウのが詰まっております。

池井戸潤さんの企業ドラマのように、古くからある業界は今までやってきたこと、今までのやり方を守ろうとします。でも、それでは徐々に需要が減り、縮小していくことは目に見えています。

私はそういうときこそ、「これまでお客様に支持されてきた自社の強みは何か?」を振り返って考えることが必要だと思います。弊社の場合はそれが「企画力」「提案力」だったので、それを最大限に生かせるサイト設計にしました。

今回のECサイトは、お客様に支持されてきた自社の強みをITの力で新たな価値に生まれ変わらせたという感覚です。そういう意味では、古くからある業界ほど“資産”があるはずで、それをITの力で時代に即した価値に生まれ変わらせて提示できれば、まだまだビジネスチャンスはあると思います。


小川克巳(おがわ・かつみ)

小川印刷株式会社 専務取締役

●取材・文:廣田喜昭

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