
BtoB EC 導入・活用ガイドブック
印刷会社・OA機器販売会社ならではの受発注業務の課題から、必要な機能、システム選定、導入を進めるポイントまで分かりやすく解説します。
法人顧客からの見積依頼や注文をWebで受け付け、受注情報をデータとして管理する仕組みです。 印刷では用紙・サイズ・部数・加工などの仕様選択、OA機器では本体・オプション・消耗品・保守など、 業界特有の複雑な取引に対応できることが重要です。
仕様選択、見積、再注文、入稿データ管理などが重要です。 印刷物は用紙、サイズ、部数、片面・両面、製本・加工など複数条件の組み合わせで注文内容が決まるため、 一般的な物販ECとは異なる設計が必要です。
目的によって役割を分けることが重要です。 顧客からの注文受付や再注文を効率化する場合はBtoB ECやWeb to Print、 製造工程・原価・外注などを管理する場合は印刷業向けMISが中心になります。
最初からすべて廃止する必要はありません。 既存顧客との取引方法を考慮しながら、消耗品や定型印刷物などWeb化しやすいリピート注文から段階的に移行する方法があります。
印刷会社やOA機器販売会社では、法人顧客からの注文をFAX・電話・メールで受け付けているケースも少なくありません。
しかし、印刷物であれば「サイズ・用紙・部数・カラー・加工・納期」、OA機器であれば「本体・オプション・設置・保守・消耗品」など、注文時に確認しなければならない条件が多くあります。一般的な商品販売と比べて、「商品番号と数量を受け取れば注文完了」とはいかないところが受発注業務を複雑にしています。
また印刷業では、見積・受注だけでなく、工程や原価などを管理する印刷業向けMISや、Web上で印刷仕様の選択から注文・入稿まで行う「Web to Print」といった仕組みもあります。そのため、単純に受発注システムを導入するのではなく、どの業務をどこまでデジタル化するのかを整理することが重要です。
本記事では、印刷・OA機器業界に受発注システムが必要とされる理由、必要な機能、システム選定時に確認したいポイントを解説します。
印刷・OA機器向け受発注システムとは、法人顧客からの見積依頼・注文・再注文などをWeb上で受け付け、受注情報をデータとして管理する仕組みです。
単にFAXをWebフォームへ置き換えるだけではありません。印刷・OA機器業界特有の取引条件を、どこまでシステム上で表現できるかが重要になります。
印刷・OA機器では、単純に「商品Aを10個」と注文するだけでは完結しない取引があります。
例えば印刷物では、用紙・サイズ・部数・カラー・片面/両面・折り・製本・その他加工・納期・入稿データといった条件が注文内容に関係します。
OA機器では、本体・本体に適合するオプション・設置場所・初期設定・既存機器の回収・保守・リース/レンタル・トナーなどの消耗品といった条件があります。
印刷・OA機器業界では、「注文をWeb化する」だけではなく、複雑な注文条件や継続的な取引までデジタル上で再現することが重要です。

受発注システムを選定する前に、現在の業務のどこで人手による確認や調整が発生しているかを整理する必要があります。
印刷物やOA機器では、顧客から商品名と数量を聞くだけでは価格や納期が決まらないケースがあります。仕様、構成、設置、加工、納期などを確認してから見積を作成するため、営業担当者や受注担当者の確認作業が増えやすくなります。
「いつものトナーを3本」「前回と同じチラシを5,000部」といった注文が電話やメールで入る場合、顧客にとっては簡単でも、受注側では内容を確認し、販売管理システムなどへ登録する必要があります。
注文を受け付ける場所と、受注情報を管理する場所が分かれていることが、転記や二重入力を生む原因の一つです。
印刷物やOA機器の消耗品には、一度きりではなく継続して購入される商品があります。印刷であれば名刺、封筒、帳票、チラシ、店舗販促物など、OA機器であればトナー、インク、用紙、消耗部品、周辺用品などが挙げられます。
そのため、新規注文機能だけではなく、前回と同じものを簡単に再注文できる仕組みが重要です。
印刷会社では、顧客から注文を受け付ける仕組みと、受注後の印刷工程を管理する仕組みを分けて考えることがポイントです。
一般的なECでは商品を選択して数量を入力しますが、印刷では商品に加えて複数の仕様を選択します。サイズはA4、用紙はコート紙、厚さは90kg、印刷は両面カラー、部数は5,000部、加工は二つ折り、納期は5営業日といった具合です。
印刷向けのBtoB ECを構築する場合、仕様同士の組み合わせと、それによって変わる価格や納期をどう扱うかを検討する必要があります。
注文はWeb、入稿はメール、大容量データはファイル転送サービスというように分かれていると、受注担当者が後から注文とデータをひも付ける必要があります。
注文番号 + 印刷仕様 + 入稿データを一つの案件として管理できるようにすると、「このデータはどの注文のものか」といった確認作業を減らしやすくなります。
名刺、帳票、封筒、販促物などの定型印刷では、同じ印刷物を繰り返し発注するケースがあります。マイページから過去の注文商品・仕様・履歴を確認して再注文できれば、一から条件を指定し直す必要がありません。
名刺のような定型印刷物をWebで繰り返し発注できるようにした事例として、株式会社山櫻の法人向けWeb名刺発注サービス「corezo(コレッソ)」があります。ecbeingのBtoB版パッケージでサイトをリニューアルし、リニューアル前後で売上と顧客数が倍になりました。
印刷会社には受注以外にも、工程管理、原価管理、用紙管理、外注管理、生産計画、出荷、請求などの業務があります。顧客との接点・見積・注文受付・再注文はBtoB EC/Web to Print、受注後の製造・原価・工程・生産管理は印刷MIS/基幹システムというように整理する考え方があります。
すべてを一つのシステムへ入れることだけを目的にせず、どの業務をどのシステムが担当し、どの情報を連携するかを決めることが重要です。
印刷会社が自社の強みを生かしてWebの受注窓口をつくった例として、小川印刷株式会社があります。DM作成に特化した「DMクリエイト.jp」、販促ツール作成の「販促クリエイト.jp」を運営し、あえて「注文完了にこだわらない」設計で企画力・提案力を生かしています。
OA機器では、本体販売だけを見るのではなく、導入前から導入後まで継続する法人取引全体を考える必要があります。
複合機やPCなどでは、本体に加えて周辺機器やオプションを組み合わせて販売することがあります。本体に適合するオプションを選択し、設置・設定なども含めて見積・注文できる流れが求められます。
法人向けのOA機器販売では、標準価格だけではなく、案件や取引先ごとの条件を踏まえて価格を提示するケースがあります。Web上での見積依頼や、顧客ごとの価格・取引条件をどこまで扱えるかがポイントです。
OA機器では本体導入後も、トナー、インク、用紙などの継続購入が発生します。顧客が利用している機器と対応する消耗品をひも付けて表示できれば、型番を調べ直すことなく再注文しやすくなります。
複合機を中心としたオフィス機器を提供するコニカミノルタジャパン株式会社では、BtoB ECサイトを活用し、手作業の社内業務を半分以下に削減しています。
OA機器では、販売後も消耗品購入、修理、保守、契約更新、リース/レンタルなどの接点があります。そのため受発注システムを単なる商品注文サイトではなく、導入済み機器や取引情報を確認できる法人向けポータルとして発展させる考え方もあります。
同社は法人向けオフィス用品購買サイト「bizconcie(ビズコンシェ)」のプラットフォームをecbeingBtoBでリニューアルし、サブスクリプション商材にも対応した購買基盤を構築しています。
「業界向け機能があるか」だけで判断するのではなく、自社の実際の取引をシステム上で再現できるかを確認することが重要です。
現在、営業担当者や受注担当者が人手で判断している条件を洗い出します。
| 現在の取引・業務の状況 | 確認したい機能 |
| 得意先によって販売価格が異なる | 顧客別価格・取引条件 |
| 注文前に見積が必要 | 見積依頼・見積作成 |
| 案件ごとに特価を提示する | 案件特価 |
| 同じ商品・仕様を繰り返し注文する | 再注文・注文履歴 |
| 印刷仕様の組み合わせが多い | 仕様選択・オプション |
| 入稿データを受け取る | ファイル受付・注文とのひも付け |
| 本体ごとに適合する消耗品が違う | 適合商品・関連商品の表示 |
| 基幹システムへ二重入力している | 販売管理・基幹システム連携 |
Webから注文を受け付けられるようになっても、その内容を担当者が基幹システムへ再入力していては、効率化できる範囲が限定されます。
商品、取引先、価格、在庫、注文、出荷、売上など、どのデータをどのシステムが管理し、どちら向きに連携するのかを整理しておきます。
受発注システムを導入しても、取引先が利用しなければFAXや電話注文は減りません。そのため、自社の受注担当者の効率化だけではなく、取引先にとって今より注文しやすくなるかを確認します。
最初はFAX注文のWeb化だけでも、運用後には見積、消耗品の再注文、問い合わせ、保守情報、販売店経由の取引などへ対象が広がる可能性があります。現在必要な機能だけではなく、数年後にどこまで受発注業務をデジタル化したいのかも含めてシステムを選ぶことが重要です。
すべてのFAX・電話注文を一度にWebへ移行しようとすると、自社だけではなく取引先にも大きな変更を求めることになります。現在の業務を整理しながら段階的に進めることが重要です。
FAX、電話、メール、営業担当者経由、EDI、Webなど、現在どの経路からどのような注文が入っているのかを整理します。
例えば、「定型商品・定型仕様のリピート注文」「見積が必要な注文」「個別対応が多い特殊案件」のように注文を分類します。すべての注文を同じ方法でWeb化する必要はありません。
トナーなどの消耗品、定型帳票、名刺、過去注文品、標準構成の商品など、比較的ルール化しやすい取引から始める方法があります。
定型的な注文や価格確認をWebへ移行できれば、営業担当者は大型案件への提案、新規顧客開拓、顧客課題のヒアリング、契約更新など、人が対応する価値の高い業務へ時間を使いやすくなります。
| 受発注システム導入で押さえたい3つの視点 |
| ✔ 受発注システム導入は、単なる受注部門の効率化ではない |
| ✔ 営業・受注・基幹システム・取引先の役割分担を見直す取り組みとして考える |
| ✔ Web化しやすい取引から段階的に移行する |
印刷・OA機器業界の受発注システムを考える際には、バックオフィス側の管理だけではなく、取引先が見積や注文を行う「入口」をどうデジタル化するかという視点が重要です。
特にOA機器では、本体販売だけで取引が完了するとは限りません。オプション、消耗品、設置、保守など、導入後も法人顧客との取引が続きます。
BtoB ECを、単に商品を掲載して注文を受け付けるサイトとしてではなく、取引先が商品を探し、見積し、注文し、再注文するための取引基盤として設計することで、受注業務の効率化と取引先の利便性向上を同時に考えやすくなります。
OA機器業界におけるBtoB ECの活用方法や、業界特有の取引をどのようにデジタル化するかについては、ecbeing BtoB OA機器・家電向けECソリューションのページでも詳しく紹介しています。
印刷・OA機器業界では、一般的な物販と比べて注文条件が多く、FAX・電話・メールだけで受注業務を行っていると、確認や転記の負担が大きくなりやすいという特徴があります。
受発注システムを検討する際には、次のポイントを確認しましょう。
重要なのは、単に「FAXをなくすこと」ではありません。注文から受注処理までの情報をデータでつなぎ、人が確認・転記している業務そのものを減らしていくことが、受発注システム導入の大きな目的です。


