「業務効率化」と「鮮度の高い情報の提供」を実現したZoffのオムニチャネル。お客様自身の視力度数も紐づけ。
BtoCパッケージ , オムニチャネル施策
「メガネをTシャツやパンツのように身近に感じてもらえるものにしたい」という理念のもと、気軽にメガネを楽しめる環境をつくり続けてきたZoff。その結果、以前は“視力を補うための器具”としての役割が強かったメガネが、現在はファッションの一部として楽しむアイテムへと変化している。
近年は実店舗だけでなくECサイトも強化し、さらに気軽に楽しめる環境づくりを強化している段階だ。
そこで今回は、株式会社ゾフの清水明登さんと玉里武士さんに、ZoffのEC戦略について聞く。
ゾフ 基本情報
<社 名>
株式会社ゾフ
<設立年月日>
1993年3月10日
<事業内容>
1. メガネ・サングラスの販売
2. メガネ・コンタクトレンズのケース、クリーナーその他の眼鏡・コンタクトレンズの付属品の販売
3. その他上記に付帯する一切の業務
<従業員数>
1,933名 ※アルバイト含む(2018年5月15日時点)
<資本金>
2億4,000万円
<売上高>
240億円(2017年度実績)
<所在地>
〒107-0061 東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道6階
3プライスメガネの先駆け
――メガネをファッショナブルに楽しむアイテムに変えた業界のパイオニアである御社ですが、こだわりや他社と差別化しているポイントを教えてください。
清水 弊社はお客様にとって買いやすい3つの価格帯、5千円・7千円・9千円の“3プライスメガネの先駆け”としてスタートしました。
価格帯を抑えることができたのは、企画・デザインから生産・販売までを一括で管理しているからです。それによってトレンドをいち早くデザインに反映し、コストを抑えながら品質を高めることができるようになりました。
最近は3プライスメガネのビジネスモデルの会社が他にも出てきたので、少し高価な1万2千円の価格帯のメガネをラインナップしたり、3プライスの中でさらにクオリティを上げたり、新たな展開を実施しています。
コンセプトは「Zoffのオムニチャネル化の推進」
――実店舗だけでなく、近年はECにも力を入れていますね。まずはECをスタートした背景を教えてください。
清水 本格的にECをスタートしたのは2011年です。この頃にアパレル業界のECが盛り上がってきたこともあり、弊社もECを立ち上げることにしました。ただ、この頃はWeb専門の部署もなかったので、カタログ的なサイトという状態でしたね。
それから2013年12月にキャンペーンとの連携などを加えてバージョンアップしようと、一度目のリニューアルを実施しています。このリニューアルによってコンバージョンレイトが上がるなど、一定の効果はありました。
――そして今年3月に二度目のリニューアルを実施されていますね。今回のリニューアルの目的は?
清水 使用していたシステムが古くなり、スマホ対応やオムニチャネル化を進めたいと思っても、そのシステムではできなくなったということがあります。在庫情報は店舗とECで連携していたものの、顧客データは統合できていませんでした。
また、お客様によってはオーダーメイドでつくる特注レンズになる場合があるのですが、その際に手動で情報を1件1件入力しなければならないなど、業務効率が悪い面がありました。そういった細かいところも改善したいと思いました。
――二度目のリニューアルに向けて、具体的にどのように進めたのでしょうか?
清水 まずは社内で「世界一買いやすいメガネのECサイトをつくる」という目標を決めました。
今もまだ度つきのメガネをECで買うことにはハードルがあります。というのは、コンタクトレンズの度数は覚えていても、メガネの細かい度数を覚えているお客様はほとんどいないからです。
それに「メガネは店舗に行って買うもの」というイメージがまだ強くあるのも事実です。その常識を打ち破り、ECで簡単にメガネを買えるという流れをつくりたいと思いました。
世界一買いやすいメガネのECサイトを実現するためにやるべきことは多々ありますが、弊社は店舗をメインに構えていることもあり、まずは店舗がもっているお客様のメガネの度数データをECでも確認できる状態にするなど、ID連携を基本に考えていきました。
――リニューアルを依頼するパッケージメーカーの選定はどのように行いましたか?
清水 2016年頃から、開発から運営・保守まで一気通貫で任せられるところはないかと探していました。
全体を見てもらいたいと思ったのは、以前に開発ベンダーが途中で変わってしまい、新たに改修を加えると、どこにどのような影響が出るかわからないという状況が起きてしまったからです。
候補は複数ありましたが、打ち合わせをしていく中で「最も信頼できる」と思ったecbeingさんに決めました。ecbeingさんは対応が誠実でしたね。それに実績が多数あるところも安心感を覚えました。
「業務効率化」と「鮮度の高い情報の提供」を実現
――実際のリニューアルの進行について教えてください。
清水 1年後にリニューアル版をローンチしようと、2017年3月頃からプロジェクトをスタートしました。去年の5月頃はまだ要件定義が終わらなくて、週に2日ほど1日8〜9時間は会議室を押さえて、僕らが「合宿」と呼ぶ会議をやっていましたね。
要件定義の段階はベンダーによっては「そちらで決めてください」というところもあると思いますが、ecbeingさんは「合宿」にも来てくれて、しっかりとコミットして1年間のスケジュールを組んでくれたので、その後もやりやすかったですね。リニューアルは私も初めての体験でしたが、「フォローが手厚く、同じチームとして携わって頂けるんだ」というのが最初の印象です。
――リニューアルで力を入れたポイントは?
清水 1つは店舗とECの連携です。基幹システムと連携し、店舗の顧客データをECに紐づけられるようにしています。これによって、お客様は自分の度数を覚えていなくても、ECにログインすると、「度数」「レンズの種類」、さらに「以前、何店で買ったメガネはこれです」と画像でチェックすることができるようになりました。
以前はカートに入れるところまでいっても、最後に度数がわからなくて離脱するというケースが多々ありましたが、この機能を加えたことで離脱率を下げることができています。また、度数は同じでもレンズの種類が変わるとメガネは全く別物になるので、レンズの種類がわかるということも大切なポイントです。
他にも、特注レンズの注文も手動入力ではなく自動でできて、在庫情報の連携も以前よりもスムーズにできるようになったので、社内の業務は効率化され、お客様に対しては鮮度の高い情報を提供できるようになったと思います。
玉里 より買いやすいECサイトにするためにデザイン面もこだわりました。メガネに詳しくないお客様がECを見に来たときに、いかに欲しいメガネにスムーズに到達してもらえるかを意識して考えていきました。
たとえば、以前は商品検索ページからしか商品を絞り込むことはできませんでしたが、リニューアル後はサイトの左側に常に「MEN/WOMEN/KIDS/サングラス/PCメガネ/全商品」というカテゴリ分けしたナビゲーションを出すことで、いつ、どこからでも商品を絞り込めるようにしました。
あとは商品を魅力的に見せるために商品画像を綺麗に見せたり、スマホページを最適化したりと、今のトレンドを意識してデザインを変えています。
――ECサイトの「今後の展望」を教えてください。
清水 メガネは1人では買えないアイテムなので、お客様が困っていることを解決できるECサイトにしたいですね。お店に行こうと思っているお客様にECを事前にご覧いただき必要な情報を集めてもらったり、店舗での待ち時間を減らすためにECで店舗のオペレーションをフォローできるようにするなど、まだビジョンの段階ですが、もっと「メガネを買う」という行為を気軽なものにしていきたいと思っています。
他部署との連携がキーポイントに
――ありがとうございました。最後に、ECをこれからリニューアルする企業などに向けて、アドバイスや注意点があれば教えてください。
玉里 ECのリニューアルは1つの部署だけで完結できるプロジェクトではないと感じました。今回は清水が他部署も巻き込んで目的地に進んでいくことができました。「他部署との連携」が重要なポイントだと思います。
清水 リニューアルはローンチがゴールではなくスタートなので、「完成したら終わり」ではありません。弊社もようやく中身を磨ける段階に入ってきたところで、これからさらに「世界一買いやすいメガネのECサイト」を目指してブラッシュアップしていこうと思っています。アドバイスというよりも、私達もこれから自分達なりのスピードで少しずつECを磨いていく予定です。
株式会社ゾフ
清水明登(しみず・あきと)
株式会社ゾフ
玉里武士(たまざと・たけし)
●取材・文:廣田喜昭