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ECリニューアルでアクセス数が150%アップ!中川政七商店の分析しやすい環境とCRMの構築

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更新日:   公開日:
▼導入システム・サービス
BtoCパッケージ , オムニチャネル施策

1716年(享保元年)創業の中川政七商店は、日本初の工芸をベースにしたSPA(製造小売)業態を確立。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、自社ブランドを全国50以上の直営店に展開するほか、業界特化型のコンサルティング事業を行うなど、工芸産業全体を活性化させる取り組みを行っている。

同社は2019年3月5日、ECサイトをリニューアルオープン。以前のECと比べて、アクセス数は150%にアップし、1セッションあたりのPVも大幅増加するなど、運営は好調だ。そこで今回は、株式会社中川政七商店 取締役 コミュニケーション本部本部長の緒方恵さんに、リニューアルを行った背景や開発で工夫した点などを聞く。

基本情報

<社 名>

株式会社中川政七商店(なかがわまさしちしょうてん)

<設立年月日>

創業:1716年 (享保元年)

<事業内容>

生活雑貨の企画・製造・卸・小売、業界特化型経営コンサルティング、流通サポート「大日本市」

<従業員数>

473名(2019年2月期)

<資本金>

10,000千円

<売上高>

62億6千万円(2019年2月期)

<所在地>

本社:奈良市東九条町1112-1

東京事務所:渋谷区神宮前5-43-7 2F(1F 店舗)



工芸品を現代に合わせてアップデートする

工芸品を現代に合わせてアップデートする

――はじめに、御社のECサイトで販売されている商品について教えてください。

ECの商品カテゴリは大きく分けて「衣」「食」「住」の3つがあり、衣料品やかばん、食卓の道具、収納品や寝具など、約4千SKUの商品を取り扱っています。弊社には、暮らしの道具を扱う「中川政七商店」、“日本の布ぬの”を取りそろえた「遊 中川」、その土地ならではの土産ものを展開する「日本市」、“リピートしたくなるくつした”がコンセプトの「2&9」など、自社オリジナルで商品の企画製造・小売りを行うブランドと、経営コンサルティングによって誕生した外部パートナーブランドの2種類に分けられます。ECは自社ブランドのほうが数は多いものの、どちらのブランドも取り扱っています。

――リアル店舗が全国に55店舗ありますが、「店舗とECの違い」は何でしょうか?

お客様からすると、ECは弊社のメインブランドである「中川政七商店」「遊 中川」「日本市」の3つのブランドを横断して購入することができる“唯一の場所”です。ただ、意図的にECを店舗の全商品が買える場所にはしていません。


たとえば、その土地ならではのもの作りやモチーフにこだわった土産ものを取り扱っている「日本市」というブランドがありますが、私たちは「土産ものは旅の思い出をモノに変換して持ち帰る行為」と考えて“土産ものの地産地消”を大切にしています。日本市の店舗を各地にオープンするときも「その土地ならでは」にこだわっていて、1店舗開けるごとにその地方の工芸や文化を徹底的に調べ、自分たちでその地方を定義しなおすことからはじめるんです。そうしてつくった「その土地ならでは」の土産ものなのに、北海道のものを九州で買えてしまうと違和感があるので、店舗でしか売っていない商品もつくっています。

――「日本市ブランドのこだわり」の話が出ましたが、御社全体のこだわりや他社と差別化しているポイントは?

一番のこだわりはSPA企業、つまり自社でつくって販売していることです。私たちが扱っている工芸品は、もともとは独自の文化や風習のある日本で暮らしやすくするための技術の集積体ですが、現在は大量生産時代の流れに圧迫を受けている背景があります。でも、日本で暮らす私たちがその技術集積である工芸品を使わないのはもったいないことなので、私たちは「工芸をアップデートする」という考え方のもと、今の時代に合った“暮らしの道具”として日常生活で使いこなせる形に落とし込んで製造販売を行っています。


具体例を挙げると、昔は刀の下げ緒や茶道具を包む桐箱に使われていた真田紐という紐があります。重い刀を支えたり、何十年何百年と茶道具を保存し続ける真田紐は非常に丈夫で素晴らしい技術が詰まった技術の集積体ですが、現在は刀も桐箱も持ち歩く時代ではありませんよね。そこで真田紐を使ったカバンの持ち手をつくるなど、現代に合わせて工芸品をアップデートしているんです。オールSKU、全国55店舗の規模でこのような取り組みをしているのは弊社だけだと自負していて、ここは他社との大きな差別化のポイントだと思っています。



リニューアルの目的は、分析しやすい環境とCRMの構築

リニューアルの目的は、分析しやすい環境とCRMの構築

――ECサイトを今年(2019年)3月に大規模リニューアルされています。御社が最初にECをオープンした時期と、今回リニューアルに至った背景を教えてください。

ECは今年12周年で、今回のリニューアルまでに2回ベンダーチェンジをしています。今回、大規模なリニューアルを行おうと考えた背景には大きく2つのポイントがあります。


1つは「分析しやすい環境」がなかったことです。以前の環境はデータをリアルタイムで取りづらく、どこで何が起きているかを見極めることが難しい状況でした。それでは改善のPDCAを回すことができないので、変える必要があると思っていました。2つめは「CRM」が構築できておらず、お客様のステータスを見極めて適切なコミュニケーションを図るという、店舗では接客の中で当たり前にできていることがECでは全くできていなかったことがあります。

――その課題を解決するためのパートナーであるパッケージベンダーは、どのようにして選定したのでしょうか?

パートナーを探す過程で改めて世の中のECサイトを多数見て、勉強しました。そうしたところ、「これは良い」と思うサイトをつくっている会社を調べてみると、ecbeingの割合が非常に高かったんです。先行事例が大量にあるということは導入コストも下がっているはずだと思ってecbeingを候補に入れました。


最終的に5社に声を掛けて選定したのですが、ecbeingは上記2点の課題をクリアできることに加えて、今後はカスタマイズを多数入れることになるのでその対応ができることと、そこに対する動き速いという点でも優位性がありました。最終的には僕が信頼している友人の1人であるメガネスーパーの川添隆さんが自社EC構築でecbeingを利用していて、実体験から強力にプッシュしてくれたことも決め手になりましたね。

――ecbeingに決まってからオープンまではどのようなスケジュールで進みましたか?

2017年1月に初めてecbeingの方と話をして、リニューアルプロジェクトのキックオフが18年4月頃でした。それから半年間、要件のすり合わせと設計を行って、18年11月からオープンする19年3月までの約5カ月で実装を行いました。今回のリニューアルはecbeingにとっても大変だったと思います。その理由は後で説明します(笑)。



「無意識下のコスト」を徹底して削減してたどりついた新たなUI「シャコロール」

「無意識下のコスト」を徹底して削減してたどりついた新たなUI「シャコロール」

――今回のリニューアルで特にこだわったポイントを教えてください。

現在プロジェクトを進めている途中段階ですが、1つはオムニチャネルの基盤づくりです。弊社には、店舗のスタンプカードの会員、自社メディア「さんち〜工芸と探訪〜」の会員、そして以前のECの会員と、3つの会員形態がバラバラになっていたので、ここを統合して複合サービスをワンアカウントでログインできる環境をつくりたいと考えています。


ただ、これは企業側の話で、大切なのは「お客様の利便性をいかに上げるか」です。その観点でいうと、スマホのUIにはとてもこだわってつくりました。私が最初にecbeingと、今回の実装を担当したAtoJに対して念を入れて何度もお伝えしたのは、「ブラウザサイトの在り方を変えるサイトにする。次世代のスタンダードになる」ということです。具体的な話をしましょう。


現在はアプリの比重が高まっていて、ユーザーはアプリの快適性に慣れている現状があります。たとえばZOZOのアプリは、指をスッと動かすだけでページが閉じる快適性がありますが、これはブラウザサイトで実現することはできません。でも私たちは会員統合もまだできていない段階なので、アプリをつくるのは時期尚早です。


それならばブラウザを現時点で最高のものに仕上げようと考えました。というのも、弊社のビジョンである「日本の工芸を元気にする!」を実現するためには日本全体の工芸品の流通金額を上げる必要がありますが、購入サイトのUIの快適性や利便性が低いということは「野球をやろうとしているのにバットを持っていない」ようなものです。だから快適性や利便性には徹底してこだわりました。

――実際には、スマホのUIをどのように変更しているのでしょうか?

私たちが通称「シャコロール」と呼ぶUIを開発しました。普通のブラウザは指をずらした分だけヌルヌルと動きますが、弊社の新たなUIは“縦や横に画面ごと”シャコシャコと動くんです。ヌルヌルのほうは画面が動くぶんだけ視線を常に動かしながらコンテンツの中身を読む・見極め続ける必要がありますが、シャコロールは画面ごと動くので、ユーザーはスマホの画角内で視線を全く動かさずに済むので情報が入ってきやすいんですね。これは実際にテストをして実証済みです。モックの段階でユーザーテストを行ったところ、ヌルヌル動くほうよりもシャコロールのほうが認識率は200%以上アップしました。


ヌルヌル動くほうはスクロールしている間も集中して画面を見ていなければならないし、気になるコンテンツが出てきたら画面を止めて戻して読み直す必要があります。まるでスロットの目押しのようなコストが無意識的にかかっていることになります。これはユーザーにとっては“膨大なコスト”であり、僕はこれを「無意識下のコスト」と呼んでいます。今後のWeb施策ではこのコストをいかに削減するかが重要なポイントになると考えています。

――「無意識下のコスト」という考え方は面白いですね。確かに、何だかわからないけれどストレスを感じるサイトがあります。

それともう1つ、「有意識下のコスト」を意識することも大切です。多くのブラウザサイトはハンバーガーメニューが上部にありますが、スマホがどんどん大画面になっている今は、指を上まで動かすのはコストがかかる行為です。そこで今回のUIでは左下にメニューボタンを置いて、無駄に指を伸ばさなくて済むUIにしています。「無意識下のコスト」と「有意識下のコスト」、これらのコストを削減することを強く意識しました。


今回は本当にシャコシャコした動きにとてもこだわったので、ecbeingや実装担当のAtoJに対しては率直に「遅い」「もたつく」と何度もお伝えして、改善を繰り返しました。シャコロールは両社にとっても初めての試みだったので、本当に大変だったと思いますが、おかげで満足のいくUIをつくることができました。



事業会社は実現したい世界観を考え抜くべき

事業会社は実現したい世界観を考え抜くべき

――ECサイト完成後のお客様からの反応はいかがですか?

面白かったのは、先日、中川政七商店の表参道店をテレビ番組で取材いただいたのですが、ECリニューアル前と「お客様の反応が全く違っていた」ことです。今回のリニューアルで商品ページから各店舗の在庫を見られるようにしたところ、以前だったらテレビ番組の翌日は取り上げられた店舗にお客様が集中するところ、今回はECや各店舗に分散したんです。


これは先ほどの利便性の話に通じるもので、結局、リニューアル前は各店舗の在庫がわからないので取り上げられた店に行くしかなく、弊社の利便性のインフラが整っていなかったんです。今回のリニューアルで「利便性のギアを上げるだけで顧客行動が変わる」ことを全社で体験できたのはよかったと思います。


店舗在庫関連でもう1つ、先ほどの「こだわりポイント」に追加すると、今回のリニューアルでは「店舗在庫の逆引き機能」を実装しています。お客様が「遊 中川 本店」に行こうと思ってECを見てみると、この店舗に在庫がある商品を一覧で見ることができるんです。私はお客様の購買心理を考えると必須機能と思っていましたが他のサイトで実装しているところをあまり見ないので、これもうちのこだわりポイントの1つですね。



⇒「店舗在庫の逆引き機能」はこちら(遊 中川 本店の場合)

――ECの「今後の展望」について教えてください。

今後は「楽しく迷子になるEC」を実現したいと思っています。というのも、リアル店舗の場合は回遊率と滞在時間が上がれば上がるほど、客単価も上がるんですね。これは僕の中では“お客様が楽しく迷子になっている状況”だと捉えています。たとえば、商業施設に行き、5階で文房具を買って帰ろうとしたら、下の階で寄ったお店に前から気になっていた加湿器があって買ってしまうことってありますよね。


これをECでいかに実現するかが今の課題です。この例は「たまたま加湿器があったから買った」わけではなくて、潜在的に必要だと思っていた商品を自然なシズル感を出しておすすめできたから購買に繋がっています。ですから弊社のECでもシャコロールを使った高い認識率で必要な情報が次々と楽しく入ってくるように進化させていきたいと思っています。


現状でも、トップページをちょっと複雑にして迷子になれるようなUIにしています。リニューアル前と比べてアクセス数は150%、1セッションあたりのPVも大きく上回ってしているので、お客様に楽しく迷子になってもらえているのかなとは思っています。

――ありがとうございました! 最後に、これからECをオープンする、またはリニューアル企業に向けてアドバイスをお願いします。

データでは見えないお客様の心理や行動を定量で出てくる数字と照らし合わせて、「どこまで重要視できるか」が大切だと思います。接客業や小売業はお客様が気付かないことをケアするのが大きな仕事であり、これは他社事例を見ているだけではわかることではありません。サイエンスではなくアートの領域も意識するという話ですが、お客様1人にフォーカスして、どういう使われ方をしているのか、徹底して深堀りする必要があると思います。


また、事業会社は「どんな世界を実現したいのか」を考えること、つまり理想のUX考察に注力して、EC構築はプロであるecbeingにお任せしたほうがよいと思います。弊社の場合は、「今回のプロジェクトは弊社のビジョンを実現するための重要なファクトです」と価値観の共有に多くの時間を割きました。RFPは時間がなかったこともあり、十二分な情報量を盛り込むことができなかったのですが、足りない部分は私がホワイトボードに実現したい世界を殴り書きして、それをecbeingの開発担当の方が毎回スマホで写真に撮って帰るという流れでしたが、それでもプロはしっかり着地させてくれます。


お客様のことをしっかり見て、「何の課題を解決するか」だけではなく、「どういう世界を実現したいのか」を握り合うことが大切です。面倒くさい客ですいませんでした(笑)


――


株式会社中川政七商店

取締役 コミュニケーション本部本部長

緒方 恵(おがた けい)


⇒中川政七商店様 公式・通販サイトはこちら



●取材・文:廣田喜昭




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