リニューアルの最終目標は、国内外の「EC在庫一元化」を実現させること。これまで以上に鎌倉シャツファンを世界に増やしていけるきっかけが作れたと思っています。
メーカーズシャツ鎌倉株式会社
メーカーズシャツ鎌倉株式会社
オンラインショップ 松井亜由子様 & 田原和敏様
1993年シャツ専門店として創業。メイド・イン・ジャパンの上質なシャツを製造から販売まで行うSPA(製造型小売)により、手頃な価格で販売を続けている。従業員数120名、2014年5月期の年商は33.5億円。国内25店舗、2012年には海外初となる店舗をニューヨークにオープン。
海外オンラインショップ "Kamakura Shirts"http://www.kamakurashirts.net/
国内オンラインショップ "Maker's Shirt鎌倉"http://shop.shirt.co.jp
プロジェクトの軌跡
- 2014年5月
- 海外向けオンラインショップ プロジェクトキックオフ
- 2014年9月
- 海外向けオンラインショップ リニューアルオープン
- 2014年10月
- 国内向けオンラインショップ プロジェクトキックオフ
- 2015年4月
- 国内向けオンラインショップ リニューアルオープン
- 2015年6月
- 新パターンオーダーシャツシステム サービスイン
リニューアルの背景
海外向けオンラインショップに必須だった国内向けオンラインショップとの在庫一元化
2012年にニューヨーク店がオープンし、メイド・イン・ジャパンの上質な「Kamakura Shirts」は徐々に評価されていきました。店舗から遠方にお住まいの方もいらっしゃるのでECでの販売確保が重要となってきました。出張でたまたまニューヨーク店にお越し頂き、ご自宅のある州から再度注文をしたいとご要望を頂くケースも多くなってきました。そのため、当初はASPサービスのECシステムを利用して海外在住のお客様向けオンラインショップを運営していました。
ニューヨーク1号店がニューヨーカーに支持され、2015年11月にマンハッタン内最高級のショッピングモール「ブルックフィールドプレイス」に出店が決まりました。日本で2002年に丸ビルに出店しましたが、大規模商業施設による成長の度合というのを経験していますので、米国での2号店というのはオンラインショップにとっても大きな起爆剤になることを確信しています。
GQでとりあげられた記事
「The Secrets's Out:Japan's Best $79 Dress Shirt」
また、100万部発行の男性誌GQなど海外のメディアでとりあげられ、海外からの注文数も、日本の店舗への欧米のお客様の来店も急増しています。
注文数がさらに伸びた場合のお客様へのサービス、在庫管理を考えると、当時のASPシステムで運用していた海外向けオンラインショップと国内向けオンラインショップとでは在庫の連携が難しいため、海外発送分と国内発送分は別々に在庫を管理する必要がありました。このため、海外向けオンラインショップは国内に比べて品揃えが少なく、魅力的なサイトではありませんでした。国内オンラインショップでの品揃えやサービスを海外向けオンラインショップでも同様に提供することは、私たちの課題でもありました。
ecbeing採用の決め手
みんなが「あっ、できそう!」と思えた管理画面の操作性
外側から見ると、海外向けオンラインショップのリニューアルですが、真の目的は在庫の一元化を目的としたシステム構築プロジェクトでしたから、まずは海外向けオンラインショップのリニューアル、次に国内オンラインショップのリニューアルが控えていました。プロジェクトの要となるシステム会社の選定ポイントは、海外向けオンラインショップ構築の実績、在庫一元化のために必要なECサイト自体の構築実績、ノウハウでした。
まずecbeingさんの管理画面を初めて見せていただいた時に、かゆいところに手が届くというか、ウエブの専門的な知識がなくても、そんなにパソコンを使うのが嫌いじゃなければ誰でもできそうという感触がありました。最初のできそうという気持ちは大事だと思っていました。デモンストレーションを見たときに、みんなが「あっ、できそう!」と。
新商品数が多く、サイズ、素材のバリエーションが豊富であることが「鎌倉シャツ」の特徴ですが、バックオフィスでは、その分大量の商品登録やオンラインショップへの企画掲載作業が発生します。受注管理、コンテンツ管理などのルーティン作業におけるストレスフリーのインターフェイスは重要です。売上管理やカテゴリー別集計など分析系のデータも充実していました。
唯一の問題は、ecbeingさんが海外オンラインショップの実績に乏しいこと。EC業界に知見のあるコンサルタントの方に相談をしたところ、「まだ海外向けの実績が多くはないけれども、国内最大手だし、ECの知見は十分なので今後は海外向けのサイトも必ず積極的に手がけるような会社だから検討してみては」とアドバイス頂き、結果として採用させていただくことになったんです。実績としてではなく、「ECへの知見、ノウハウ」という観点から選択したこの判断は結局大成功だったと思っています。
構築時の対応
ECのノウハウが生かされた、ドル建て決済システム連携
海外オンラインショップ構築において、もっとも大変だったのはやはりドル建て決済連携でした。メインの販売拠点は米国ですし、為替手数料の支払や為替リスクのヘッジのためにも、ドルでの回収が必要でしたから、海外の大手決済処理会社との契約をすることにしました。後にこの会社は決済代行をするのではなく、決済をするための接続ツールを扱う会社であることがわかるのですが、当初はシステム連携がうまくいけば日本の決済代行会社のように、ドル建て決済が進むものだと思っていました。
決済代行処理連携についてヒヤリングするために香港の支社も行きました。米国の決済処理会社は個々の決済をつなぐだけなので、実際に決済させるためには銀行と契約をする必要があると言われましたが、クレジットカード取引なのに、なぜここで銀行がでてくるのか全く理解できない。帰国後、この会社の日本法人に連絡をして、海外のカードの仕組みについてレクチャーをしてもらうことになりました。ecbeingさんにもいっしょに聞いてもらうことをお願いし、参加いただきました。結局、日本と海外ではクレジットカードの仕組みが異なり、海外ではクレジットカードを発行する銀行とアクワイアラと呼ばれる加盟店契約会社が別に存在するということがわかり、その後、私たちは香港で銀行口座を開設しました。グローバルサイト構築の中でも、このドル建て決済については海外との交渉や契約で初めてのことばかりで大変でした。
本来は、決済処理との連携について、システム構築をお願いしているecbeingさんと決済処理会社のハブとして動くのは私たちだったのだと思いますが、打ち合わせへの参加を始めとして、ecbeingさんにはすっかり社内のメンバーのように動いていただきました。英語の仕様書を頼りに開発・テストを繰り返され、仕様書は完全ではなかったため、英語での問合せ、確認など試行錯誤を繰り返すecbeingさんの開発のプロセスは想像以上に大変だったと思います。ただし、ECシステムに明るいecbeingさんだからこそ言語は違えど仕様書をシステムの観点からよく理解され、大きな問題もなく構築いただけたと考えており、本当に感謝しています。
発想の転換で運用負荷を大幅に軽減した「パターンオーダー」
お客様のサイズに合わせて、素材、形を選んでいただく「パターンオーダーシャツ」は人気の既存サービスですが、今後の受注増に備え、完全システム化を実現しました。バックエンドの話になりますが、以前はこのサービスはMTM(Made to Measure) システムとしてオンラインショップとは別に社内サーバーに存在していました。紙やファックスで本部に流した情報を、本部担当のスタッフが手入力するというマニュアル業務も多い運用です。新しいシステムでは全てをオンラインショップに統合し、店舗からの注文も全て完結させてしまうという大きな発想転換をしました。販売データも全て一元化しオンラインショップに情報を持たせます。リアル店舗ではiPadを使って、お客様とともにサイズや生地の種類を入力し、プリントアウトで詳細な控えをお渡しできるようになります。本部側で必要な作業はないため、店舗数やオーダー数が急増しても対応が可能です。
一連の通販運営に関する部分はecbeingさんのパッケージを使わせていただいていますが、MTMシステムの部分はカスタマイズです。パッケージについては、パッケージでできることを理解し、ecbeingさんのアドバイスや提案を確認しながら、わたしたちの運用にあった利用方法を考えたり、ときには運用を変えたりしながら進めてきました。
カスタマイズは自由にできるからこそ、要件定義は難解でした。店舗でのiPadの利用や、店舗からのオーダーをオンラインショップに統合するという新しい運用を形にするために、ひとつひとつ要件定義に落としこむ必要があります。店頭で測定しながら紙に記録していたお客様のサイズをインターフェイスでどう表現するか、生地の在庫を実際の倉庫在庫と連携させなければならないなど、今までマニュアルで対応していた運用をシステム化するにあたって検討、決定すべき細かい要件がecbeingさんのヒヤリングによって可視化されていきました。
導入後の効果
スケジュール遵守の静かなリニューアル
リニューアル後一ヶ月くらいはサーバーが落ちたり、画面が動かなかったりなどのトラブルを覚悟していました。リスク管理はできていたので、売上についても昨対80%くらいになってもしょうがないかなと思っていました。しかし全くサーバーのトラブルが無く、売上も順調です。運用は変えた部分もありますので、現場のフォローは必要ですが、よい意味で静かなリニューアルを実現できました。トラブルがないということがどれだけ幸せなことか実感しています。海外向けオンラインショップのリニューアルから、国内向けオンラインショップの構築までecbeingさんとはすでに1年以上のおつきあいになります。わたしたちのビジネスにおける考え方を自分たちのことのように理解しようとしてくださるのがecbeingさんです。業界最大手ecbeingさんの「安心・安全」を選択したことは正しかったと身をもって実感しています。
事実、ある企業様に「鎌倉シャツさんはどこのECシステムを利用しているの?」と聞かれたことがあります。ecbeingと答えると「それはベンツに乗っているようなものだね」と言われました。まさにぴったりの表現でセキュリティの観点からの安心・安全だけではなく構築、その後のサポートにおいてもこれは言えると思います。
ニューヨーク2号店のオープンまでには、まだまだやりたいことがあります。ニューヨーク出店後、世界中から出店のオファーが来ています。商品を触ったことのない人でも、一度試してみたいと感じてもらえるような表現をどこまでできるか、これが今海外向けオンラインショップに求められていることですね。
わかりやすい、そして発見が多い管理画面
アイコンなども非常にわかりやすい。必要なデータに視覚的な操作でたどりつける感じがします。説明書を読まなくても自分のやりたいことからシステムを触って、理解していけてしまうというのが印象です。
注文の処理、ページ作成、商品掲載、日々の売上など管理画面を通じての業務は多岐にわたります。なんでもCSVに吐き出せるのも助かります。経理用の出荷データのダウンロードも楽になりました。「こんな絞り込みがしたいんだけど」と相談すると、すでにプルダウンに準備されていたり。ある程度広い範囲の受け口がパッケージだからあるのだと思います。こんなこともできるんだという発見がすごく多いです。多分まだ知らない機能もあるのでしょうね。
お客様の要望にひとつずつ応えていく、リアル店舗でもオンラインショップでも
最初の海外発送は、海外転勤をされたお客様から鎌倉シャツを買いたいのだけれど、EMS(日本郵便の国際スピード郵便)を使えば送れるから、お願いできないか」というお問い合わせに応えることから始まりました。お客様が困っている、お客様のSOSをクリアしていくにはどうしたらよいか、リアル店舗でも、オンラインショップでも常にそのように考えてきました。現在、そういったお客様のご要望から立ち上がったオンラインショップは国内外問わず多くのお客様にご利用いただけており、お悩みに対してサービスをもってご提供できるよう努めています。
今回のプロジェクト責任者である松井様は、過去にシステム構築を経験されており、考えられるトラブルなどあらゆる想定をされていらっしゃいました。納品後に大きな問題もなく、「何も起きなかったこと」を高く評価いただき大変嬉しく思っています。と同時に、私たちにとってはあまり経験のなかった外貨決済などの挑戦を、深くシステムを理解された責任者の方とともにできたことが今回のリニューアルの成功につながったのだと改めて感じました。
私たちに海外オンラインショップ構築の実績が多くないことをご理解いただいた上でのスタートではありましたが、もちろん不安もありました。一方、会社としては大きなチャンスをいただいているわけです。お互いに0からのスタートと当初は言っていただきましたが、納期遵守の完成がゴールであることに変わりはないですから。開発サイドでの苦労はもちろんありました。英語の仕様書の確認、連携のためのパーツは何を使えばよいのか、そこからのスタートでした。つながったと思っても返ってくるメッセージはもちろん英語です。パターンは無数にあり、そのパターン毎のテストの繰り返しが続きました。、全然仕様書にのっていないパターンが返ってくることも多く、時間との戦いでした。一切をおまかせいただくこともありがたいですが、本来、私たちがプロとして実績をふまえて、お客様をリードしていくべきところを、今回のように仕様確認のため海外決済会社との打ち合わせから始まって、巻き込んでいただき、いっしょにゴールまで走れたことでプロジェクトの達成感は格別なものがありました。よい意味で人を巻き込み、社内外関係なくチームを活性化しながら目的を達成していかれるお客様なので、私たちもメーカーズシャツ鎌倉様のEC成功に向けて本気で取り組みをさせていただきました。今後もメーカーズシャツ鎌倉様の功績の軌跡をともに歩めるように、メーカーズシャツ鎌倉様がお客様のご要望にお答えしつづける姿をお手本にさせていただき、わたしたちもご要望にお答えできるよう努めていきたいと考えています。
2015年7月