
ファッション・アパレルEC事例と市場規模・トレンドを紹介
課題と成功企業比較をわかりやすく解説
課題と成功企業比較をわかりやすく解説

ファッション・アパレルECは、EC市場の中でも特に活況を呈している分野です。近年は、実店舗とECサイトを連携させたオムニチャネル戦略や、AR技術を活用したバーチャル試着・オーダーメイドなど、先端テクノロジーを取り入れた新しいサービスが次々と登場しています。
その結果、単に商品を販売するだけでは競争に勝てない時代となり、各社はより高度な顧客体験やマーケティング施策が求められています。
本記事では、ファッション・アパレルECの最新トレンドや業界が直面する課題、その解決のヒントについて、数多くのアパレルECサイト構築実績を持つecbeingが詳しく解説します。
サクッと理解!本記事の要点まとめ
ファッション・アパレルEC市場の現在の規模や今後の成長予測は?
日本のファッション・アパレルEC市場は2022年以降も拡大傾向が続いており、2030年には約2兆7,900億円、2035年には2兆8,800億円まで成長すると予測されています。EC化率も2019年の13.9%から2024年には22.4%に上昇しており、今後もスマートフォン普及やデジタル技術の進化を背景に市場の成長が期待されています。
ファッション・アパレルECで注目されている最新トレンドは?
現在注目されているトレンドは「サステナブルファッションへの取り組み」と「オンライン接客・デジタル施策の強化」です。リサイクルやリユースを推進するECサイトや、スタッフによるライブ配信、パーソナライズされた商品提案などが積極的に取り入れられています。
ファッションECサイトにはどのような種類があるの?
主な種類は、メーカー・ブランド直販型、モール型、個人経営型(いずれもBtoC)、ネットオークション型やフリマアプリ型(CtoC)、サブスクリプション型などがあります。各形態ごとに顧客層やサービス特徴が異なり、ブランド価値や差別化戦略が重要視されています。
ファッション・アパレルECで成功している企業の共通点や取り組みは?
ZOZOTOWNやユニクロ、アダストリア、ワールドなどの成功企業は、オムニチャネル戦略やアプリ・SNS連携、パーソナライズド対応、動画・ライブ配信による顧客体験向上など、デジタル技術を活用した施策に力を入れています。ユーザー視点の利便性・満足度向上が共通ポイントです。
ファッション・アパレルECが直面している課題と今後の対策は?
売上減少や新規顧客獲得の難しさ、少子高齢化によるターゲット層縮小などが主要課題です。対策として、オムニチャネル化によるLTV最大化、パーソナライズド対応、動画・UGC活用、スタッフのアンバサダー化、インバウンド・越境EC対応など、多角的なデジタル戦略や顧客体験向上が求められています。
ファッション・アパレルECは、EC市場の中でも特に活況を呈している分野です。近年は、実店舗とECサイトを連携させたオムニチャネル戦略や、AR技術を活用したバーチャル試着・オーダーメイドなど、先端テクノロジーを取り入れた新しいサービスが次々と登場しています。
その結果、単に商品を販売するだけでは競争に勝てない時代となり、各社はより高度な顧客体験やマーケティング施策が求められています。
本記事では、ファッション・アパレルECの最新トレンドや業界が直面する課題、その解決のヒントについて、数多くのアパレルECサイト構築実績を持つecbeingが詳しく解説します。
ファッション・アパレルEC市場の規模と最新動向
日本のアパレルEC市場は、1990年代の大手通販会社や百貨店によるカタログ通販の台頭、そして「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」など仮想モールの登場を契機に大きく発展しました。2000年代には「ユニクロ」のEC進出や「ZOZOTOWN」の開設など、アパレル専門ECサイトが拡大し、市場成長を牽引しています。
そして、2010年代にはスマートフォンの普及に伴い、ユニクロの「UNIQLOアプリ」などスマホアプリ経由でのEC利用が一般化。これにより、消費者の購買体験が大きく変化し、アパレル業界のEC化が加速し、さらに2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響で実店舗からECへのシフトしていく企業が多く現れました。その中で、バーチャル試着やオンライン接客など新たな施策も登場し、EC市場はさらに拡大。
2022年以降は韓国発「MUSINSA」や中国発「Temu」など海外発の低価格ECモールも日本市場に参入し、特に若年層を中心に支持を集めています。
アパレル通信販売金額の推移(2019〜2024年、予測含む)

出典:『通販・e-コマースビジネスの実態と今後2025』株式会社富士経済
今後もアパレルEC市場は拡大傾向が続く見込みで、2030年には2兆7,900億円(EC化率 23.8%)、2035年には2兆8,800億円(EC化率 24.7%)まで成長すると予測されています。
アパレルEC市場の推移と予測

出典:『通販・e-コマースビジネスの実態と今後2025』株式会社富士経済
ファッション・アパレル業界のEC化率と推移
ファッション・アパレル業界のEC化率は年々上昇しており、2019年には13.9%だったものが2024年には22.4%まで拡大しています。このEC化率の伸びは、ファッション・アパレル業界に限らず、物販全体でも同様の傾向がみられ、消費者の購買行動が大きく変化していることが背景にあります。
総務省『令和4年通信利用動向調査』によると、近年、日本におけるスマートフォンの普及が急速に進み、2022年には世帯あたりのスマートフォン普及率が90.1%と過去最高を記録しています。
一方で、パソコンの保有率は減少傾向が続き、2022年時点で69.0%となりました。こうしたデジタル環境の変化により、消費者は場所や時間にとらわれず、スマートフォンを活用してオンラインショッピングを楽しむことが日常となっています。

このような背景から、ファッション・アパレル業界におけるEC化率は年々上昇しており、EC市場規模も拡大傾向が続いています。
特に、スマートフォンを主なデバイスとした利便性の高いショッピング体験が、ユーザーの購買行動を大きく後押ししています。また、各ブランドやEC事業者は、スマートフォンユーザーに最適化されたサイト設計やアプリ開発、SNS連携など、モバイルファーストの戦略を強化することで、さらなる顧客獲得と売上拡大につなげています。
今後も、スマートフォンの普及とデジタル技術の進化を背景に、ファッション・アパレル業界のEC化率は引き続き上昇し、市場の成長が期待されます。
▼物販系分野のBtoC-EC市場規模
分類 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |||
市場規模 (億円) |
EC化率 (%) |
市場規模 (億円) ※下段:昨年比 |
EC化率 (%) |
市場規模 (億円) ※下段:昨年比 |
EC化率 (%) |
|
食品、飲料、酒類 | 25,199 | 3.77% | 27,505 (9.15%) |
4.16% | 29,299 (6.52%) |
4.29% |
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 | 24,584 | 38.13% | 25,528 (3.84%) |
42.01% | 26,838 (5.13%) |
42.88% |
書籍、映像・音楽ソフト | 17,518 | 46.20% | 18,222 (4.02%) |
52.16% | 18,867 (3.54%) |
53.45% |
化粧品、医薬品 | 8,552 | 7.52% | 9,191 (7.48%) |
8.24% | 9,709 (5.64%) |
8.57% |
生活雑貨、家具、インテリア | 22,752 | 28.25% | 23,541 (3.47%) |
29.59% | 24,721 (5.01%) |
31.54% |
衣類・服装雑貨等 | 24,279 | 21.15% | 25,499 (5.02%) |
21.56% | 26,712 (4.76%) |
22.88% |
自動車、自動二輪車、パーツ等 | 3,016 | 3.86% | 3,183 (5.55%) |
3.98% | 3,223 (1.26%) |
3.64% |
その他 | 6,964 | 1.96% | 7,327 (5.22%) |
1.89% | 7,391 (0.87%) |
1.91% |
合計 | 132,865 | 8.78% | 139,997 (5.37%) |
9.13% | 146,760 (4.83%) |
9.38% |
経済産業省『令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』を基に作成
先述したコロナの影響も追い風となり、ファッション・アパレルのEC化率は増加傾向にあります。
ファッション・アパレルECの最新トレンド
ファッション・アパレルECのトレンドは、時代の変化や環境の変化、コロナの影響など、様々な要因によって変化しています。
現在注目されているトレンドとしては、「サステナブルファッションへの取り組み」と「オンライン接客の強化」が挙げられます。
サステナブルファッションへの取り組み
近年、様々な業界でSX(Sustainability Transformation:サステナビリティ・トランスフォーメーション)の取り組みが進んでいます。ファッション・アパレル業界もその例外ではなく、衣料品のリサイクルを推進する取り組みのほか、ダイバーシティに関する取り組みなどが行われています。
サステナブル(持続可能な)ファッションへの取り組みとして、従来の大量生産・大量消費を前提としたリニアエコノミー(直線型経済)から、リサイクルやリユースを取り入れたサーキュラーエコノミー(循環型経済)への転換が強く求められています。
これに伴い、ZOZOTOWNのようにブランドの古着・中古アイテムを自社ECで販売するECサイトのほか、サステナブルファッション専門のECサイトも登場しており、自社のリセールプラットフォームを保有するアパレル事業者は2020年には8社でしたが、2023年には163社にまで急増しました。消費者の環境意識の高まりとともに市場全体の裾野が広がっています。
オンライン接客・デジタル施策の強化
コロナ禍以降、オンラインショッピングの利用が増加したことで、ファッション・アパレルECサイトにおける接客体験の充実が重要視されるようになりました。
近年は、従来の「商品を見せるだけ」の受け身型から、スタッフによる着用例の写真掲載やライブ配信を活用した「双方向型」の接客が広がっています。
能動的な接客の例として、スタッフによる商品の着用画像を掲載するほか、ライブ配信機能を活用したスタッフによるライブ配信などが挙げられます。特に、ライブ配信では、リアルタイムで消費者の質問にスタッフが回答することで、購入前の不安を解消でき、ユーザー満足度や購買率の向上につながっています。今後も、パーソナライズされた提案やデジタル技術を活かした新たなオンライン接客の取り組みが進化すると予想されます。
ファッション業界におけるECサイトの種類と特徴
近年、ファッション・アパレルECサイトの種類が多様化し、メーカーやブランド以外にもさまざまな事業者や個人が参入するようになりました。これにより、消費者のニーズや購買行動に合わせた多彩なサービス形態が登場し、各社は従来以上にブランド価値や差別化戦略が重要視されています。
ここでは、事業者が知っておくべきファッション業界のECの種類とそれぞれの特徴について、分かりやすく解説します。
BtoC向けECサイト
メーカー・ブランド直販型(例:「BEAMS」「SHIPS」)
メーカーやブランドが自社で運営する公式オンラインストアは、リアル店舗と連携しながら展開されることが多いファッション・アパレルECサイトの代表的な形態です。
自社製品のみを取り扱うため、ブランドの世界観や独自性をECサイト上で強く打ち出すことができ、限定商品やオリジナルキャンペーン、ポイントサービスなどの独自施策によってファン獲得や顧客ロイヤリティ向上を実現しやすい点が特徴です。
また、ほとんどのメーカーやブランドはリアル店舗も所有しているため、オンラインで気になった商品を店舗で試着したり、サイズや質感を直接確かめられるメリットがあります。
近年では、店舗在庫の確認や試着予約、店頭受け取りといったオムニチャネル戦略(OMO)を活用したサービスも一般的となり、オンライン・オフライン・アプリ・SNSを連携させることで、シームレスで多様な顧客体験を提供しています。
こうした取り組みにより、消費者の利便性が高まり、売上アップやブランド価値の向上にもつながっています。
モール型(例:「ZOZOTOWN」「楽天市場」)
モール型ECサイトは、ZOZOTOWNや楽天市場のように、複数のブランドやショップが1つのオンラインショッピングモールに集まるファッション・アパレルECの代表的な形態です。
ユーザーは多彩なブランドや商品を一括で比較・検索でき、カテゴリ・サイズ・カラーなどで細かく絞り込みながら欲しいアイテムを探すことができます。
モール自体が高い集客力を持っているため、EC初心者や中小ブランドでもテナント料を支払って出店することで、多くのユーザーに自社商品をアピールしやすく、認知拡大につなげやすいのがメリットです。一方で、同じモール内には競合となる他ブランドや商品も多数出品されているため、価格設定やプロモーション、レビュー対策などで差別化を図り、上位の売上を目指すことが重要となります。
個人経営型
個人経営のショップやセレクトショップが運営する個人経営型ECサイトは、チェーン展開を行わず、オーナーが独自の視点でセレクトした複数ブランドやマニアックな商品、他では手に入りにくいアイテムを扱うのが特徴です。
大手モールや有名ブランドでは取り扱わない商品ラインナップによって、コアなファン層を獲得しやすく、オリジナリティやストーリー性が顧客の支持につながっています。また、リアル店舗を持たずにオンラインのみで展開するケースも増えており、個性や専門性を活かしたファッション・アパレルECとして注目されています。
CtoC向けECサイト
ネットオークション型(例:「ヤフオク!」「楽天オークション」)
ネットオークション型ECサイトは、個人が商品を出品し、入札形式で販売価格が決まるネットオークションサービスです。特にレアなブランド品や限定アイテムなどは高値で取引されることも多く、出品者が高値で売りたいときに最適な仕組みとなっています。
購入者にとっても、他では手に入らない希少な商品を競り落とせるメリットがあり、年齢や性別を問わず幅広い世代に利用されています。ファッション・アパレル分野でもネットオークションは、個人間取引の新たな選択肢として注目されています。
フリマアプリ型(例:「メルカリ」「minne」「FRIL」)
フリマアプリ型ECサイトは、スマートフォンの普及により登場した個人間で手軽に売買できるサービスです。ユーザーはスマホでアイテムを撮影し、自分で価格を設定して出品でき、売買が成立した際には10%程度の手数料が発生する仕組みが一般的です。
中古ファッションアイテムや雑貨などを安く購入できる点や、不要になった商品を気軽に現金化できる点が大きな魅力となっています。%程度を出品者側が負担する仕組みが多いようです。
フリマアプリは、低価格での取引や簡単な操作性が人気を集めており、個人間取引の新しい形として幅広い年代から支持されています。
さらに新しいECサイトのかたち
サブスクリプション型
サブスクリプション型ECサイトは、月額定額で洋服やアクセサリーをレンタルできるサービスです。オンラインサイトや専用のECアプリを利用して、ユーザーは毎月好きなファッションアイテムをレンタルでき、返却と同時に次の商品が自宅に届く仕組みとなっています。
トレンドアイテムを気軽に楽しみたい方や、たまにしか着ない服を賢く活用したい方に人気があり、実際に着てみて気に入ったアイテムはそのまま購入できるサービスも増えています。
サブスクリプション型ファッションECは、新しい消費スタイルとして注目を集めており、手軽に最新トレンドを取り入れたいユーザーから高い支持を得ています。
このように、ファッション・アパレルEC市場は多様なサービス形態が共存し、消費者は自分のスタイルやライフスタイルに合わせて最適なショッピング体験を選択できるようになっています。
メーカーやブランドは独自ECの強化や、顧客体験の向上に力を入れることが今後ますます重要です。
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日本で有数の巨大ブランド・巨大モールの成功した秘訣を徹底分析し、自社ECに活用してみましょう。
サイト | 売上 | 会員数 | ブランド数 | 特長 | ポイントの有無 | 使いやすさ |
ZOZOTOWN | 1,600億円以上 | 1,100万人以上 | 8,455 | 独自のバーチャル試着サービスやマルチサイズ展開 | あり | ★★★★ |
ユニクロ | 1,000億円以上 | 5,500万人以上 | 1 | 動画コンテンツあり | あり | ★★★★ |
アダストリア | 620億円以上 | 1,500万人以上 | 30以上 | 商品画像でブランドごとの世界観を作っている | あり | ★★★★ |
ワールド オンラインストア | 460億円以上 | - | 60以上 | ブランド別のECサイトあり | あり | ★★★ |
ZOZOTOWN
モール型ファッション・アパレルECサイトの代表格であるZOZOTOWNは、幅広いファッションブランドや商品を取り扱い、20代〜30代のファッション感度の高い男女を中心ターゲットとしています。利用者の平均年齢は33歳と、トレンドに敏感な若年層から支持を集めています。
ZOZOTOWNが高いコンバージョン率を実現している理由の一つは、ユーザー体験(UX)を最優先したECサイト設計にあります。たとえば、通常のアパレルECサイトでは「サイズ選択」「カラー選択」「カートに入れる」といった複数ステップが必要なところ、ZOZOTOWNではワンクリックで簡単に選択できます。これにより、カート投入までの導線が短縮され、購入直前での離脱を大幅に防いでいます。
さらに、ログイン不要でお気に入り登録が可能、商品詳細ページで配送予定日を明示、新規ユーザー登録を促す高額クーポンの発行など、購入率アップにつながる多彩な施策も実施。入力に時間がかかっているユーザーにはチャットボックスを自動表示してサポートを行うなど、きめ細やかな顧客対応にも注力しています。
このように、ZOZOTOWNはモール型ファッション・アパレルECサイトとして、ユーザーの快適なショッピング体験と高いコンバージョン率の両立を実現しており、ファッション・アパレルEC業界でも成功事例の1つとなっています。
ユニクロ
日本のファストファッションを牽引するユニクロは、2017年に「いつでも、どこでも」買い物ができるオムニチャネル戦略を打ち出して以降、メーカー直販型ファッション・アパレルECサイトの強みを最大限に活かしています。
自社運営ならではの柔軟なECサイト・公式アプリ連携によって、獲得した顧客データを多彩なマーケティング施策に活用し、ユーザー体験(カスタマーエクスペリエンス)の向上を図っています。
ユニクロのECサイトには、店舗在庫確認やモデル・購入者によるスタイリング提案、購入者レビュー、サイズアシスト機能など、多彩なサポート機能が搭載されています。
特に「MySizeASSIST」では、商品ごとに最適なサイズを簡単に選択でき、オンラインでのサイズ選びの不安を軽減します。
また、購入者レビューには評価や着用感、性別・身長体重・足のサイズ・購入サイズといった詳細な情報が掲載されており、自分に近いユーザーの声を参考にできるため、オンライン購入のハードルを下げています。
さらに、AIチャットボット「UNIQLOIQ」は、在庫確認やコーディネート相談などの買い物アシスタントサービスを提供し、ユーザーの疑問や不安をリアルタイムでサポート。オムニチャネルとECの連携による利便性と安心感で、多くのユーザーから支持を集めています。
アダストリア
「グローバルワーク」や「ローリーズファーム」など多数の人気アパレルブランドを展開するアダストリアは、自社ECサイト[andST](アンドエスティ)を通じてブランド力を高めています。
特に、リアル店舗とスマホECの両方を利用するオムニチャネルユーザーが売上の約40%を占めている点は、アダストリアの強みの一つです。また、ブランドごとの世界観を重視した商品紹介ページや、細部までこだわったビジュアル表現なども、ユーザーの購買意欲を高めるポイントとなっています。
[andST](アンドエスティ)では、オンライン購入のハードルを下げるため、過去に購入したアイテムデータとの比較機能を提供。さらに、商品の質感やディテールを詳しく伝えることで、ユーザーが安心して商品を選べるよう工夫されています。
2020年にはオムニチャネル戦略をさらに強化するため、ECサイトで購入した商品の店舗受け取りや試着予約、ECで購入した商品の店舗での返品対応など、リアル店舗とECの連携による購買体験の利便性向上にも注力。これにより、顧客との接点拡大と満足度向上を実現し、アパレルECにおける成長を続けています。
ワールド オンラインストア
「ワールド オンラインストア」は、60以上の多彩な自社ブランドを展開し、幅広いテイストやターゲット層に対応したアパレルECサイトです。ブランドごとに独自の公式ECサイトを持ち、シーズンビジュアルやキャンペーンなどブランド世界観を強く打ち出すことで、ユーザーは目的のブランドに絞ったコアな情報や最新トレンドを体感できます。また、自社ブランド以外の商品も取り扱うことで、さらに豊富な商品ラインナップを実現しています。
ユーザーは、普段着用しているブランドのサイズを参考に他ブランドの商品サイズを選べたり、商品詳細ページから関連キーワードで類似アイテムを探すことができるなど、利便性の高い機能も充実しています。
さらに、ブランド共通ポイントサービス「ワールド プレミアムクラブ」と連動し、リアル店舗とWEBを統合したCRM(顧客管理システム)を構築。加えて、外部ECモールとのリアルタイム在庫連携やデータ連携も強化するなど、WEB強化に積極的に取り組んでいます。
アパレルECが直面する課題と今後の対策
ここからは、売上5億円以上のアパレル企業が注視する最新事例と最新の業界動向を踏まえ、ファッション・アパレルECが直面する主要な課題と解決のポイントを解説します。
ファッション・アパレル市場の売上減少
近年、国内ファッション・アパレル市場は少子高齢化や消費者の節約志向、サステナブル志向の高まりなどを背景に市場全体の売上が減少傾向にあります。
このような状況下でもファッション・アパレルECで成長するためには、オムニチャネル戦略やデジタルマーケティングの強化、在庫・物流の最適化、サステナブル商品や新しい消費体験の提供が重要です。
自社ECをHUB化しLTVを最大化
ECサイトは単なる販売チャネルではなく、会員情報や顧客接点を一元化するHUBとして機能させることが求められてきています。
リアル店舗・EC・アプリ・SNSの会員情報統合やポイント連動、在庫の一元管理、店舗受取や返品対応など、チャネル横断で顧客体験を向上させ、LTV(顧客生涯価値)を高める施策が不可欠です。
パーソナライズド対応とファンマーケティング
顧客情報の一元化とAI技術の活用が進むことで、ファッション・アパレルECではパーソナライズドな商品提案や最適化されたコミュニケーションが実現しています。自社ECサイトやアプリ、会員統合によるLINE会員証、セグメント別メール配信などを活用し、一人ひとりの購買履歴や行動データをもとに、ユーザーごとに最適な施策を展開することが可能となりました。
これにより、顧客のニーズや嗜好に合わせた商品レコメンドやクーポン配布、ロイヤルカスタマー向けの限定イベントの案内など、きめ細やかな顧客ナーチャリングが実現できます。
また、ユーザーとの距離を縮める自社アプリの導入や、LINE連携によるパーソナライズされた情報発信は、顧客ロイヤリティの向上に寄与しています。特に、顧客が新たな顧客を呼び込むような熱狂的なファンを育成する「ファンマーケティング」が注目を集めており、ファンコミュニティ形成やユーザー参加型キャンペーンなどを通じてリピーターの獲得と顧客育成を推進しています。
こうしたファン層を中心としたマーケティング施策が、アパレルECの継続的な成長に不可欠となっています。
店舗スタッフのオムニチャネル化・アンバサダー化
近年、店舗スタッフを単なる店頭販売員としてだけでなく、SNSやECサイト上で積極的に活用する「アンバサダー化」が進展しています。
スタッフがInstagramやX(旧Twitter)、公式ECサイトなどを活用して商品紹介やスタイリング提案、さらには自身のライフスタイルまでプレゼンテーションすることで、ブランドの世界観や価値をダイレクトに伝える役割を担っています。
また、ライブ配信などデジタル施策を通じて、スタッフ自身がリアルタイムで接客を行い、リアル店舗とECの垣根をなくす取り組みも拡大。スタイリング紹介から直接購入できる導線設計や、スタッフによるブログでの商品レビューや日常の発信など、オンライン・オフラインを横断した“シームレスな購買体験”の提供が求められています。
このように、店舗スタッフのオムニチャネル化・アンバサダー化は、売上拡大に直接寄与するだけでなく、顧客の購買意欲やブランドへのロイヤリティ向上にも大きく貢献しています。
動画・ビジュアルコンテンツ活用
近年、動画やビジュアルコンテンツの活用、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の掲載は、消費者の購買意欲を高める有効な手段になってきています。
動画やビジュアルコンテンツを活用して商品の着用イメージや機能・使い方をわかりやすく伝えることで、ユーザーの購買意欲を高めることができます。
また、顧客による写真投稿やレビュー、SNSでのUGC(ユーザー生成コンテンツ)をECサイトに反映させることで、リアルな使用感や体験が伝わり、商品の信頼性と訴求力が一層強化されます。
こうした動画・UGC施策の活用は、購買促進やブランドのファン獲得にもつながります。
自社ECの新規顧客獲得が難しい
新規ブランドが自社ECを立ち上げても、立ち上げ当初はブランドの認知度が低く、思うように集客や新規顧客の獲得が進まないケースが多く見られます。もともとモールで実店舗を出店していたブランドが独自ECサイトを構築する流れも一般的ですが、スタート直後はEC化による効果をすぐに実感するのは難しいのが実情です。
さらに、広告費用の高騰も課題となっており、単純に広告を多用するだけではコストパフォーマンスが悪化する場合もあります。
こうした状況では、先述したモール型ECの活用が有効です。モール型ECは既に多くのユーザーを抱えており、ブランドの新規顧客獲得ツールとして非常に効果的です。
加えて、SNSやインフルエンサーマーケティング、SEO対策などのデジタル施策を組み合わせた集客戦略を展開することで、自社ECへの流入経路を多角化し、認知拡大と新規顧客獲得を効率的に進めることができます。
少子高齢化が進みブランドターゲット層が縮小している
国内市場では少子高齢化の進行により、ファッションブランドが従来ターゲットとしてきた年齢層の人口が減少し、ブランドターゲット層自体が縮小していることが大きな課題となっています。
こうした中、ファッション・アパレル業界が今後も成長を続けていくためには、インバウンド需要と越境ECへの対応がカギになります。
特に注目すべきなのは、訪日中国人をはじめとした東南アジアのインバウンド顧客が増加している点です。多くの訪日外国人が旅行中に日本でアパレル商品を購入し、帰国後も越境ECを通じてリピート購入するという消費行動が定着しつつあります。
実際、中国市場では越境ECで購入される商品のうち、衣料品・アパレルは美容コスメに次ぐ人気カテゴリーとなっており、国内市場だけでなくグローバル市場に大きな成長余地があることが明らかです。
こうした変化に対応するためには、多言語対応や現地SNSでのプロモーション、海外決済や国際配送体制の強化が求められます。中国をはじめとした多様な訪日外国人への対応や越境ECの展開が、今後ますます重要になっています。
【2025年最新】アパレルECサイトの事例
NIKE
Nike Liveと呼ぶ新しいコンセプトストア「NIKE BY SHIBUYA SCRAMBLE」で実施されているサービスを一部ご紹介します。
店舗周辺のナイキメンバーからの意見や会員データを元に、よりそのコンシューマーのニーズに対応するサービスを展開し、プロダクトや体験を提供するもので、多忙なコンシューマーのためにデジタルの力とデータを駆使し、気楽に人が集まれるスペースのような店舗づくりになっています。
NIKE アプリ・アット・リテール
ナイキメンバーは様々なプロダクト、情報やサービスを店舗でもアクセスも可能になりました。アプリを利用して購入、返品することはもちろん、在庫商品を検索して48時間取り置きすることも可能です。
Nike Fit(ナイキ フィット)
ナイキ フィットでは、ナイキストアアスリートがユーザーの足をスキャンして、あらゆるスタイルのフットウエアの中から最適な商品を見つけます。
スニーカーは、種類によってサイズ感が異なることもあります。このアプリを使用することで、商品に合わせてユーザーの足のサイズに合ったサイズをおすすめしてくれるのが特徴です。
BEAMS(当社事例)
メディア化
スタッフのオムニチャネル化。店舗スタッフが投稿する動画コンテンツで購入率2.4倍にアップしました。
スタッフ発信のタイムライン、スタイリング(コーディネート写真を投稿)、フォトログ(写真1枚と簡単な文章付き)、ブログに続く動画コンテンツを充実させ、動画閲覧ユーザーと非閲覧ユーザーでは購入率が2.4倍にもアップしました。
転送容量や購入導線のUIにも徹底的にこだわり「ながら観できる・使いやすい」を実現しています。
購入率以外の指標、エンゲージメント(閲覧率・お気に入り率)も高く、ユーザーとの恒常的な接点としても寄与しています。
まとめ
ファッション・アパレル業界のECで売上上位に位置するブランドやメーカーは、オムニチャネル化やデジタル技術の活用、パーソナライズドな顧客対応など、消費者の多様なニーズに柔軟に応えるさまざまな施策を展開しています。アプリやSNS連携、店舗スタッフによる動画・ライブ配信、ユーザー参加型のコンテンツなど、リアルとデジタルを融合した顧客体験の向上に注力しているのが特徴です。
本記事で紹介した各社の取り組みを参考にしながら、ユーザーが安心して快適にショッピングできるECサイトの構築・運営を目指してみてはいかがでしょうか。顧客満足度を高める工夫が、今後のファッション・アパレルECの成長を支える重要なポイントとなります。

株式会社ecbeing
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