越境ECとは? メリット・デメリットから始め方・具体的な事例まで徹底解説

中国人観光客の爆買いに代表されるインバウンド需要が一時期話題になりましたが、その後注目され始めたのが「越境EC」です。越境ECはインバウンド需要をしのぐ巨大なマーケットとして、EC業界で注目されています。海外への進出の機会にもなることから、様々な企業が越境ECに身を乗り出し、その市場規模は年々拡大し続けています。
しかし越境ECを始めるのは簡単ではなく、国外との流通になることから様々な弊害も生じます。今回は越境ECの基礎知識からメリット・デメリット、そして始め方・具体的な事例までご紹介します。
越境ECとは?
越境ECとは、国境を越えて国際的にアイテムの販売を行う通信販売のことを言います。自国のみで販売をするのに比べて販路は格段に広がるため、新たな顧客開拓による売上増加が期待できる戦略です。近年期待されているECビジネスの形態として、日本においても取り組む企業が増えてきています。
越境ECの市場規模は世界的にも拡大を続けているため、まだまだたくさんのチャンスが潜んでいる可能性のある戦略です。
越境ECが注目されている理由
越境ECが注目されているのには、企業側にもユーザー側にもそれぞれ理由があります。
まず企業側の理由については、新たな顧客開拓のある大きな市場がある。というところが挙げられます。国内である程度の認知があり流通している企業は、新規顧客の開拓というよりは他の市場で新たな顧客開拓を行なっていく必要があります。
越境ECは市場規模が大きいうえに右肩上がりの市場ということで、販路拡大につながるのはもちろん、ECサイトなら店舗もいらないためコストも抑えられます。
ユーザー側のメリットとしては、自国にないアイテムを購入できる点や、メイドインジャパンに代表される信頼性の高いアイテムを購入できる点が挙げられます。特に、偽物が横行している中国においてはこの傾向は顕著です。
越境ECの市場規模
越境ECの市場規模は年々拡大を続けており、経済産業省のレポートによると2018年には74.3兆円、2019年には90.8兆円、2020年には109兆円もの巨大な市場になるとの予測がされています。
2020年までは前年度比20%以上の成長率を見せるとされており、その背景にはスマートフォンやタブレット、パソコン等のインターネット端末の世界的な普及があります。アジアは欧米諸国やヨーロッパに比べEC事業の始まりが遅かった分、ここ数年の成長は大きく今後も右肩上がりの予想です。
越境ECのメリット・デメリット
どんなビジネスにもメリット・デメリットはあります。越境ECも例外ではありません。
国境をまたぐという越境ECならではのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
越境ECのメリット
越境EC最大のメリットは日本企業の海外進出や新たな販路開拓として、海外のユーザーを取り込むことができる点です。
世界を相手にするので当然市場規模は巨大であり、また年々その規模は拡大し続けています。また、外国人の顧客は日本人よりもネットショッピングを行う頻度や金額が高い傾向にあります。新規顧客の獲得にも適しており、幅広いターゲット層にアイテムを販売することができます。
他にも実店舗を海外に構えるとなると莫大な資金や手間がかかりますが、インターネットを活用した越境ECならリスクを抑えつつ低コストでビジネスを展開することができるのも大きなメリットです。
近年では国内ECサイトがあれば簡易に越境ECを始めることができるサービスもあるため、さまざまな選択肢から参入することができます。
越境ECのデメリット
越境ECのデメリットは、アイテムが国境をまたぐ点についての手間や弊害が挙げられます。
まずは言語の壁が問題となり、自社のアイテムの説明をターゲットとする国の言語にしっかりと翻訳する必要があります。販売のみならず、ECサイトには欠かせないサポート対応も検討しなければなりません。
次に問題となるのが決済で、先進国であればクレジットカードで対応できますが、クレジットカード決済が一般的でない国もあるため、ターゲットとするその国の決済方法を導入していく必要があります。
他にも通販には欠かせない現地の物流・配送の問題や、国境をまたぐための関税などの国際輸送に関する知識、そしてビジネスをするわけですから対象となる国の法的知識も必要です。
これらを整備しないといけないため、越境ECを構築するのは煩雑な手間と専門性の高い知識が必要になるということがデメリットとして挙げられます。
越境ECの市場規模
巨大であると言われる越境EC市場ですが、各国の具体的な取扱高はいくらぐらいなのでしょうか。ここでは越境EC市場全体の市場規模や、主要な国の取扱高について見ていきます。
世界の越境ECの市場規模
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まずは市場全体、世界の越境ECの市場規模について見てみましょう。
経済産業省の調査によると越境ECの市場規模は年々右肩上がりで伸びており、2020年には日本円換算で109兆円にものぼる予定です。
年間の推移(未来予測を含む)は以下の通りです。
・2016年 44兆円
・2017年 58.3兆円
・2018年 74.3兆円
・2019年 90.8兆円
・2020年 109兆円
これらの背景には、パソコン・タブレット・スマートフォンといった端末の世界的な普及により、ECサイトから手軽にものを購入できるようになったことがあります。
また、インバウンド需要の延長で自国に無い製品の良さを知ったユーザーおよびそのバイラルを受けたユーザーが、ECサイトのユーザーへと遷移していったことも挙げられます。
EC主要国(アメリカ・中国・日本)の越境ECの市場規模
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2016年度の市場規模を表した図によると、他国からの購入金額は中国が圧倒的に多く、21,737億円、ついでアメリカが10,415憶円、日本は2,396憶円という結果になっています。
国の規模もありますが、消費金額では中国がアメリカの倍以上と、圧倒的な金額を記録しています。続いて販売額は3国間では日本がトップで16,522憶円、次いでアメリカが13,542憶円、中国においては4,486憶円と最も低い金額です。
日本の販売額は優秀で市場規模も前年比23.9%で成長しており、特に中国からのニーズは30%を超えていることから、これから越境ECに取り組む日本のECサイト運営企業には大きなチャンスがあることがわかります。
EC主要国(アメリカ・中国・日本)の越境ECの市場規模推移
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2020年まで日本は消費国として1.18%と成長率が低いのに対して、アメリカは1.72%、中国は1.84%と消費国として高い成長率が予測されています。
2018年以降は未来予測ですので、今後の為替や法規制等の世の中の流れの影響を受けて変化をする可能性はありますが、このデータから日本のEC事業者にも越境ECに取り組むメリットがあることがわかります。
中国の越境EC
越境ECを検討するうえで必ず着目しなければならないのが、中国の越境ECの状況です。
一時期の爆買いに代表されるインバウンド需要は近年報道こそされなくなってなりを潜めたように感じますが、実はECサイトに遷移しただけで相変わらず高い需要は続いています。
中国の越境EC人口の推移
中国の越境EC人口は年々増加しており、この調子だと2019年には越境ECを利用している中国のネットユーザーの人数は8,000万人を超えそうな勢いです。これは日本国におけるインターネット通販ユーザーの数を上回る数字です。
国内のユーザーを上回るニーズがあるわけですから、越境ECに取り組むのなら中国の市場を見逃すわけにはいきません。
年々消費が拡大している理由
中国の越境EC市場の消費が拡大している背景には、ネットに接続できる端末の急速な普及が挙げられます。
2016年を例に挙げてみると、中国の有名ECモール京東(JD.com)の注文の8割は携帯端末からのものであり、他のモールでもこの傾向は起こっていると考えられます。
また中国では偽物や粗悪品が横行しており、自国の商品に対する満足度が低いため、正規のアイテムや品質の良い商品に対するニーズが高まりつつあり、この動向が越境ECにおける消費を加速させています。
中国のEC市場はモール出店型が主流
ECサイトに出店するには、日本においてはモール出店か自社出店の2つがありますが、中国においても手法は同じです。
しかし中国においてはモールが多数存在しており、中でもアリババグループの総合オンラインショッピングモールである「天猫(T-MALL)」と直販の展開も行っている「京東(
JD.com)」がシェアの大半を占めているという状況です。
「天猫」はアディダスやユニクロをはじめとした、日本でも馴染みのあるブランドメーカーが出典しており、ユーザーが安心して購入できる仕組みが作られているため大きなシェアを獲得しています。
「京東」は家電販売から始まった会社であるため他サービスと比べ電化製品が充実しており、徹底されたアフターケアが特徴的です。最近では家庭用品や食品など、あらゆる商品の販売もしており、中国における2大モールの一つとなっています。
中国市場では何が売れているのか
越境ECの中国市場においては、アパレル商品や化粧品、食品、ベビー用品が良く売れています。この背景にはユーザーに女性が多いこと、生活用品に対する自国のアイテムへの不信感があります。
また、日本を訪れ購入した商品を帰国した後にリピート購入するユーザーが多いため、アパレル・美容・健康カテゴリーで経営しているECサイト事業者にとって中国越境ECは売上を増加させるために効果的です。
越境ECの事例
越境ECを検討するにあたって見逃せないのが、すでに取り組んでいる企業の成功事例です。
長年にわたる様々な工夫や成功した理由などを研究すると、自社の取り組みにもプラスになります。
ダイアナ株式会社
ダイアナは開業以来70年の歴史を誇り、104の店舗数、年間売上高159億円の規模の婦人靴を中心としたオリジナルブランド販売企業です。
2011年より越境ECを活用し、海外へも販路を拡大しており、高品質のメイドインジャパンにこだわった他社との差別化戦略で実績を上げています。価格設定は高くもなく安くもない「適正価格」で販売しています。
国内向けのECはダイアナの世界観がビジュアルで伝わりやすいように設計されていますが、認知度が低い海外においては豊富な商品ラインナップを押し出したデザインとなっており、親近感のある設計になるよう工夫されています。
また多言語化に対応しており、当初は簡体字のみでしたが台湾と香港の顧客も多いことから繁体字のページも作り、より購入しやすい環境を提供しています。
越境ECに取り組み始めてからコツコツと、PDCAを回して作り上げてきたダイアナのサイトは越境ECサイトの成功事例です。
メーカーズシャツ鎌倉株式会社
手ごろな価格にもかかわらず、メイドインジャパンにこだわった上質なシャツを提供し続けているメーカーズシャツ鎌倉株式会社も、越境ECに力を入れて海外の販路を開拓した企業の好例です。
海外進出のきっかけは2012年で、ニューヨークに実店舗をオープンしたところから始まります。
メイドインジャパンの上質なシャツは徐々に浸透、100万部発行の男性誌GQアメリカ版をはじめとした海外メディアにも度々取り上げられるなど評価されていき、リピート注文も増えてきたことから、オンラインショップでのアイテムの提供に踏み切りました。
越境ECでは、海外からの発注にスムーズに応えるため国内向けECサイトと在庫管理を一元化、決済はドル建て決済やPayPal対応にするなど、海外顧客の利便性を考えたさまざまな工夫を行っています。
品質面・サービス面共に顧客満足度を上げることで、オンラインでの注文や国内店舗への来店を増やしています。
株式会社グラニフ
個性豊かで多彩なデザインTシャツで人気の株式会社グラニフも、越境ECに取り組んで成長している企業です。
イラストやロゴ、グラフィックデザイン、フォログラフィといったデザインのTシャツを扱い、まるでアートギャラリーをのぞいているかのような気分にさせてくれるサイトデザインが特徴的です。
海外サイトは英語表記がされているだけでなく、1万円以上の購入の場合は送料無料になるサービスやポイントが利用できるなど、顧客が気軽に購入することができる環境を整えています。
また国内ECと海外サイトを一元管理しており、BtoCでの越境ECを展開するのみならず、海外のフランチャイズ向けの越境BtoBサイトも運営しています。個人と企業両方を対象とした越境EC戦略で成果を挙げている事例です。
越境ECセミナー
ecbeingでは、これから越境EC事業に取り組む企業様へ向けて、セミナーを開催しています。越境ECに関する様々な知識が網羅されていますので、これから越境ECを推進していきたい、始めたいというECサイト担当者様にはオススメのセミナーとなっております。
独自ドメインでの越境EC施策の事例や知識が得られる
構築や推進が難しいとされている越境ECにおける独自ドメインサイトの運営ですが、仕組みさえきちんと作れば自由度の高い運営ができるのがメリットです。
ecbeingにおいては、大企業をはじめとした豊富な越境ECサイトの構築事例をもとにセミナーで公開しており、また成功事例のみならず失敗事例まで解説しています。各社がどの国を対象にしているのか、実際の売上はどうなっているのか、決済や物流などにはどのように対応しているのかといったことがわかります。
また、英語圏やアジア圏といった越境ECにおけるエリア別の事例も参照することができます。
必ずや自社の目指すところに近しい情報をお伝えすることができます。
リスクヘッジまでしっかりと解説
越境EC導入には言語の壁、文化の壁、法律の壁など様々なリスクが潜んでいます。
ecbeingのセミナーにおいては、例えばドル建て決済をした場合は円の入金時に為替変動リスクが伴う点、中国においてはクレジットカードが主流でないので現地のアリペイ・銀聯と言った決済方法を用意する必要があることなど、きちんとリスクヘッジについても解説しています。
自社で越境ECに取り組む際にも、不要なトラブルを避けることに繋がります。
市場調査サービスを提供
新規事業に取り組む際に欠かせない市場調査ですが、多大な手間とコストが必要となる越境ECにおいては、推進をスムーズに行うためにも、リスクを避けるためにも、成功率を上げるためにも非常に重要です。
しかし自社でゼロからノウハウの無い状態で市場調査を行うのは大変です。
ecbeingにおいては、市場調査を代行してくれるサービスも提供しており、実際に越境ECに取り組んだ際の年間販売シミュレーションも提供しています。
越境ECで更なる売上アップを目指そう
越境ECは国境を越えてビジネスをするため、法律や言語、異文化への適合といった壁はありますが、非常に魅力的な市場です。特に人口が日本の10倍、GDPも上回る中国は巨大で伸びしろもあり、注目すべき市場です。
複雑難解な越境ECの取り組みですが、ecbeingのように専門的にサポートを行っている企業もあり、高度な施策をスムーズに実施することも可能です。
多くの企業が参入しつつある越境ECですので、先行者利益を得るために検討してみてはいかがでしょうか。
※1出典:経済産業省 平成 28 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)
http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001-2.pdf