インターナルマーケティングとは？
目的・メリット・施策・成功のポイントまで徹底解説

インターナルマーケティングとは

インターナルマーケティング（Internal Marketing）は、従業員を「社内のお客様」と捉え、従業員の満足度やエンゲージメント向上を目指す経営戦略の一つです。
従業員が企業理念やブランドに共感し、主体的に行動できるようにすることで、顧客満足度や企業価値の向上を図ります。従来の「顧客向けマーケティング」とは異なり、「従業員向け」に会社のビジョン・価値観・サービスの理解を浸透させる活動を指します。

さらに、従業員の働きやすさや業務効率を向上させることもインターナルマーケティングの重要な要素です。最近では、業務のデジタル化や受発注の電子化（BtoB ECサイトの活用）も、従業員満足度を高めるための有効な手段となっています。

インターナルマーケティングが注目される背景

なぜ今、インターナルマーケティングが多くの企業で注目されているのでしょうか。少子高齢化による人材不足、働き方改革やリモートワークの普及、人的資本経営の重要性の高まりなど、近年の社会的な変化が大きく影響しています。
ここでは、インターナルマーケティングが必要とされる背景や、企業経営における役割について詳しくご説明します。
�@人的資本経営の重要性の高まり
2023年から有価証券報告書での「人的資本」情報開示が義務化され、企業は従業員への投資や働きがい向上への取り組みを外部へ示す必要が増しています。
�A深刻化する人材不足・離職率の高さ
優秀な人材の獲得・定着が経営課題となる中、従業員満足度の向上が離職防止やエンゲージメント向上のカギとされています。
�B顧客接点の多様化とブランド体験の重要性
SNSや口コミサイトの普及により、従業員一人ひとりの行動や発信が企業ブランドに直結する時代になっています。
�C多様化する働き方への対応
リモートワークの普及や働き方改革で、従業員とのコミュニケーション手法やモチベーション維持が課題となっています。

インターナルマーケティングの主な目的

インターナルマーケティングのゴールは単なる従業員満足度の向上にとどまりません。従業員が自らの仕事に誇りを持ち、企業理念やビジョンに共感しながら自発的に行動できる組織を目指すことが重要です。
インターナルマーケティングが目指すべき主な目的や、その達成によって企業にもたらされる変化について紹介します。

�@従業員満足度（ES）の向上
働きがいのある職場環境や、従業員の成長支援を通じて満足度を高めます。
�Aエンゲージメントの強化
経営理念やビジョンへの共感を深め、組織への帰属意識や自発的な行動を促します。
�B顧客満足度（CS）・ロイヤルティの向上
従業員が自信を持って顧客対応できることで、サービス品質や顧客体験の向上につながります。
�C企業ブランド価値の向上
社員がブランドの「体現者」として社外へ発信することで、企業イメージ向上や採用力強化に貢献します。

インターナルマーケティングのメリット

インターナルマーケティングを導入することで、企業や従業員にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。離職率の低下や組織の一体感醸成、サービス品質や顧客満足度の向上など、さまざまな好循環が期待できます。さらに近年は、BtoB ECサイトなどのデジタルツール導入による業務効率化・負担軽減も大きなメリットです。
ここでは、インターナルマーケティングが企業活動にもたらす主なメリットについて具体的に解説します。

�@離職率の低下・定着率向上
社員が会社に愛着を持つことで、離職の防止や長期的な人材定着が期待できます。
�A社内コミュニケーションの活性化
横断的な情報共有や部門を超えた協力体制が生まれやすくなります。
�Bイノベーション創出・業務改善
社員のモチベーションが高まることで、新たなアイデアや自発的な改善提案が増加します。
�C採用ブランディング強化
社員からのポジティブな発信が社外に広がり、求職者への訴求力が高まります。

よくある課題・失敗例

インターナルマーケティングの取り組みは一筋縄ではいきません。せっかく施策を導入しても、経営層と現場の温度差や、継続性・効果測定の不足などによって思うような成果が出ないケースもあります。
実際に多くの企業が直面する課題や、失敗しやすいポイントについて具体的な例を交えてご紹介します。

�@経営層と現場の温度差
経営層が理念やビジョンを発信しても、現場に浸透せず「他人事」になってしまうケースが見られます。
�A施策が一過性で終わる
社内イベントやキャンペーンを単発で実施するだけでは、持続的な変化につながりません。
�B双方向のコミュニケーション不足
トップダウン型の発信だけで、現場の声を吸い上げる仕組みがないと、社員の納得感や参加意欲が生まれにくくなります。
�C効果測定・改善が不十分
実施した施策の成果を評価せず、形骸化してしまうことも。従業員満足度やエンゲージメントスコアなどのKPI設定が不可欠です。

インターナルマーケティングの具体的な施策

理論だけでなく、実際にどのような施策を行えば効果が出るのか知りたい方も多いでしょう。社内コミュニケーションの活性化、ビジョン浸透、教育研修の充実、働きやすい環境づくりなど、さまざまな取り組みが企業現場で実践されています。
インターナルマーケティングの代表的な施策を分かりやすくご紹介します。

�@社内コミュニケーションの活性化

・定期的な全社ミーティングや部門横断のワークショップを開催する

・社内SNSやチャットツールで情報共有や気軽な意見交換を促す

�Aビジョン・理念の浸透活動

・経営理念やビジョンをポスターや社内報、朝礼などで繰り返し伝える

・ミッション・バリューを体現した社員を表彰する仕組みを作る

�B従業員の声を吸い上げる仕組み

・匿名アンケートや意見箱で職場や業務の改善点を募る

・現場スタッフが参加できる改善提案制度やプロジェクトを設ける

�C社員教育・スキルアップ支援

・業務に必要な知識やスキルを学べる研修やeラーニングを用意する

・他部署とのジョブローテーションやOJTで多様な経験を積ませる

�D働きやすい環境づくり

・フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方を導入する

・社内カフェや休憩スペースを整備し、リフレッシュしやすい雰囲気をつくる

�E社員のモチベーションアップ施策

・成果やチャレンジを正当に評価し、表彰やインセンティブを与える

・社内イベントや懇親会を開催し、チームワークを高める

BtoB ECサイト導入による業務プロセス見直しと業務負担の軽減

インターナルマーケティングを実践し、従業員の満足度や業務効率を高めるためには、業務プロセスそのものの見直しが欠かせません。特に、BtoB ECサイト（受発注システム）を導入することで、現場の業務負担を大幅に軽減し、働きやすい環境を実現した企業の事例が増えています。

MONOVATE（旧：日東金属工業）：営業負荷を大幅に削減

MONOVATEでは、代理店やAmazonでの販売に加え、自社ECサイトを構築。製品の多くがカスタマイズ前提であるため、従来は営業が個別に受注対応し、負荷が非常に大きい状況でした。 BtoB ECサイト導入後は、カスタマイズ製品の受注効率化や図面データのダウンロード、お問い合わせフォームの改良により
・営業担当者のヒアリング業務が半自動化
・お客様とのやり取りがスムーズ化
・証明書や図面の即時ダウンロードで問い合わせ対応も大幅削減
といった効果が表れています。また、受注から納品・支払いまでのフローを見直し、ECサイトに最適化したことで、社内の業務プロセス全体が効率化しました。

株式会社ヤギ：「Fably（ファブリー）」でアナログ業務をDX化

老舗繊維専門商社のヤギでは、従来電話やFAXで行っていた受注業務をBtoB ECサイト「Fably」に集約。ECサイト導入により、
・在庫管理や受注、納期確認などをWeb上で完結
・「取り置き」「サンプルオーダー」など業界独特の商習慣にも対応
・出荷明細や品質データもサイト上で確認可能
といった機能を実現し、その結果、顧客サービスの大幅向上と、受発注・出荷業務の工数削減を同時に叶えました。

導入時のポイントと進め方

インターナルマーケティングを成功させるためには、単なる制度導入や一時的な施策だけではなく、全社的な視点と継続的な取り組みが不可欠です。
効果的な進め方や現場の巻き込み方、KPI設定やPDCAの回し方など、導入時に押さえておきたいポイントを詳しく解説します。

�@目的・ゴールの明確化
「なぜインターナルマーケティングを行うのか」「どのような成果を目指すのか」を経営層と現場で共有することがスタートラインです。
�A経営層のコミットメント
経営トップ自らが率先して発信・参加し、現場と双方向でコミュニケーションを取る姿勢が求められます。
�BKPIの設定と効果測定
従業員満足度調査、エンゲージメントスコア、離職率、社内イベント参加率など、具体的な指標で成果を可視化し、改善につなげます。
�C現場の巻き込み
現場社員をプロジェクトメンバーに加えたり、意見を反映する仕組みを設けることで、納得感・当事者意識が生まれます。

よくある質問（FAQ）

インターナルマーケティングに取り組む際には、「どのように始めればいいのか」「中小企業でも効果があるのか」など、さまざまな疑問や不安が生まれるものです。
ここでは、多くの方から寄せられる質問に分かりやすくお答えします。自社での導入を検討する際の参考にしてください。

Q1. インターナルマーケティングと従業員満足度（ES）向上の違いは何ですか？

A. インターナルマーケティングは「従業員満足度向上」も含め、従業員の行動変容やブランド体験の向上までを広くカバーする考え方です。単なる満足度調査や福利厚生の充実にとどまらず、「自発的な行動」や「企業価値向上」までを目指します。

Q2. 小規模な企業でもインターナルマーケティングは必要ですか？

A. 規模に関係なく、従業員のモチベーションや組織一体感は重要です。小規模企業こそ、トップと現場の距離が近い強みを活かしやすく、効果的に取り組めます。

Q3. どのように社内に浸透させればよいですか？

A. 経営層の本気度を示しつつ、現場を巻き込む仕組みづくりが大切です。ワークショップや社内報、双方向コミュニケーションの場を設けるのが効果的です。

Q4. 効果測定はどのように行えばいいですか？

A. 定期的な従業員満足度調査（ES調査）、エンゲージメントスコア、離職率、社内アンケート、イベント参加率など複数の指標を組み合わせて評価しましょう。

まとめ

インターナルマーケティングは、企業の持続的成長や競争力強化に欠かせない重要な経営戦略です。従業員満足度やエンゲージメント向上のためには、社内コミュニケーションや人事制度の整備だけでなく、業務のデジタル化・ECサイトの導入による職場環境の改善も大きな推進力となります。
働きがいのある職場づくりや組織活性化のために、ぜひ実践につなげていきましょう。